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リレーコラム、夢をつないで、第12回。

昔はみんな、いっしょだった。

きょうされん 専務理事、藤井 克徳。

1949年、福井県生まれ。1970年、東京都立小平養護学校教諭。1981年、きょうされん事務局長。1982年、あさやけ第二作業所、精神障害者共同作業所 施設長。2018年現在、NPO 法人日本障害者協議会代表、日本障害フォーラム副代表、きょうされん専務理事。

障害のある人の、書物上の登場は随分と古い。最古の古事記や日本書紀に出てくる。そこには蛭子、ヒルコと記され、肢体にマヒがあると推測される。平安時代以降、縁起物として七福神が出回るが、これら七柱の神々には何らかの障害があるとされた。江戸時代になると、落語が庶民の身近な芸能となる。落語の世界で欠かせない登場人物に、熊さん、八っつぁんと並んで与太郎がいる。この与太郎には、知的障害が重なるのである。

ノーマライゼーションという言葉をご存じだろうか。その心は、いろんな人がいてこそノーマルな社会、で、多様性の尊重をアピールする造語である。1950年代の後半に、北欧で法律理念にまでなった、このノーマライゼーションは、あっという間に世界を駆け巡った。

しかし、よくよく考えれば、この多様性や、寛容性は、日本でも、大昔から、江戸時代の頃までは、人びとの暮らしの中に、自然と溶け込んでいたのである。明治時代以降の富国強兵、殖産興業の流れが強まる中で、障害のある人は、一気に社会の隅に追いやられてしまった。この傾向は、戦争の時代に強まることになる。世界史の規模でみれば、ナチスドイツの蛮行はすさまじい。虐殺された障害者は、20万人以上に及ぶ。本誌 YWF Topics で紹介の、"わたしで最後にして。ナチスの障害者虐殺と優生思想" を読んでいただきたい。

ところで、障害のある人の人口比はどれくらいだろう。 WHO の報告では、15パーセント、ニュージーランドでは22パーセントを前提に、社会の仕組みを作っている。厳密にいうと、人は例外なく、絶命の寸前には障害状態をくぐる。もはや、障害のある人のことを、単純にマイノリティとは言えまい。

オリンピック パラリンピックが来年に迫った。漢字圏の中国や、朝鮮半島、台湾、そして、日本で、しょうがいしゃ に 害 を充てているのは日本だけである。妨げを意味する 碍 の常用漢字化については、国会においても、文科省所管の国語審議会においても、新たな動きがある。踏み込んだ結論を導いてほしい。漢字圏のパラアスリートに、不快な思いをさせないためにも。

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