社会的自立を願う利用者さんに、地域で必要とされる仕事と、働く喜びを。
昨年、12月の障害者週間に、日本工業倶楽部(東京都)で、ヤマト福祉財団、小倉昌男賞 贈呈式を開催。受賞者の仕事関係者や、ご家族、歴代受賞者なども招待し、華やかに催しました。
「歴代受賞者の内訳を見ると、男性が多く、白組が優勢のようですが、今年は、女性 おふたりと、紅組も盛り返しています」と、冒頭挨拶で会場を和ませた、瀬戸 薫理事長。社会福祉法人 豊芯会 理事長の上野容子さんと、社会福祉法人 シンフォニー理事長の村上和子さんの功績を、先月、おふたりの施設を見学した際の感想を交えながら紹介しました。
「上野さんは、支援を必要とする障害のあるかたが、他の障害のあるかたや、高齢者のために、支援する側として働き、地域に貢献できる仕組みを作られています」。
上野さんは、大学卒業後、精神科ソーシャルワーカーとして勤務するかたわら、障害者の自立をサポート。地元との結びつきを大切に、互いに助け合える方法を模索します。25年前、ひとり暮らしの障害者や高齢者に、手作り弁当を手渡しで配達する飲食店、ハートランドひだまりを開店。これにより、精神障害者と、地域のかたの接点を作り、理解を深めることができました。現在は、社会福祉法人 豊芯会として、豊島区の、ひとり暮らし高齢者配食サービス事業を受託。毎日300食以上をお届けする、地域になくてはならないフードサービス事業所となっています。
村上さんは、大分県で、知的障害者の働く場の拡大、また、交通機関の利用に関する支援など、生活環境の改善にも取り組まれています。
学校を卒業した子どもたちに かよう場がない、と涙する保護者の思いを受け、27年前に、わずか6畳のスペースでファンシーショップを開業。これを足がかりに、ケーキショップ、包装センターと、新たな働く場を次々と創り出しました。1998年には、社会福祉法人 シンフォニーを設立し、雇用契約を結びながら、最賃を保証する、就労継続支援 A 型事業所の夢も実現します。
「私が施設を訪れたのは給料日の前日。明日はなんの日、と利用者さんに聞くと、給料日です、と元気に答えてくれました。働いて給料をもらう、この、当たり前の喜びの大切さを、彼らの笑顔が、あらためて教えてくれたのです」と、瀬戸理事長は紹介しました。
おふたりに共通するのは、卓越した行動力。そこには、数字では見えない感動がある。
選考の経緯は、選考委員を代表して、きょうされんの藤井克徳 専務理事が発表。
「おふたりに共通しているのは、先ずはやってみようとする、卓越した行動力。障害者が働くことをとおして、地域に貢献できるように、挑戦を続けられています。そこには、給料などの、数字だけでは計れない感動があり、選考委員の心を強く動かしたのです」。
そんな おふたりの姿勢は、推薦者の言葉からも垣間見えます。
「上野さんは、精神障害者が、地域で生活するために必要な行政支援について、待っているだけではダメだ、と自ら仕組みを考え、提案。ボランティア活動を通じて実績を示し、周りを納得させ、制度化を実現しました」と、社会福祉法人 豊島区社会福祉事業団 理事長の横田 勇さん。
北海道の NPO コミュニティシンクタンク あうるず 理事の菊池貞雄さんは、「私たちは、ソーシャルファームとして、社会的雇用弱者を応援しています。課題は、生産した農産物をどう販売するか。上野さんに相談すると、即決で豊島区役所で販売できるように働きかけてくれたのです」とその行動力を讃えました。
村上さんの推薦者は、社会福祉法人大分県社会福祉協議会 大分県 身体障害者福祉センター 参事の塩﨑政士さんです。
「村上さんは、知的障害者が、一般生活を送るための施設内訓練はもちろん、公共交通機関を楽に利用して、職場にかよえる仕組みまでも創り上げました。その根底に流れているのは、深い母親の愛情です。本賞のブロンズ像の写真を見たとき、これこそ、村上さんにふさわしい賞だと思いました」。
長年にわたり、信念を貫いてきた姿に、敬意と、これからの期待を込めて。
続いて瀬戸理事長が、推薦者の言葉にもあった、正賞の、雨宮 淳 氏 作のブロンズ像、愛 と賞状、ならびに、副賞賞金100万円を おふたりに贈呈。上野さんを陰で支えるご夫君と、病気のため欠席された村上さんのご夫君の代理で出席したスタッフに、花束を手渡しました。
来賓祝辞には、厚生労働省、社会、援護局障害保健福祉部の橋本泰宏部長が登壇。
「共生社会は、障害者の社会参加と自立なくして実現できません。おふたりの、長年にわたり信念を貫き築かれてきた実績に 敬意を表すとともに、これからのご活躍に期待をしています」と、お祝いの言葉を贈りました。
贈呈式のクライマックスは、両受賞者のスピーチです。これまでの苦労と、今日の喜びをかみしめて お話しされる姿に、会場は、感動と祝福の拍手で包まれました。
その後の祝賀会でも、受賞された おふたりの周りには、終始、お祝いの言葉を伝えるかたたちが集い、笑顔が絶えることはありませんでした。
写真前列左より、森下明利 ヤマトグループ企業労働組合連合会会長、受賞された上野 氏 ご夫君、上野容子さん、村上和子さん、瀬戸 薫ヤマト福祉財団理事長。後列左より、金森 均 ヤマトホールディングス株式会社代表取締役副社長、神田晴夫ヤマトホールディングス株式会社代表取締役副社長、 木川 眞ヤマトホールディングス株式会社取締役会長、山内雅喜ヤマトホールディングス株式会社代表取締役社長、森 日出男ヤマト運輸株式会社代表取締役会長、長尾 裕ヤマト運輸株式会社代表取締役社長。
祝賀会会場では、おふたりの事業所をご紹介するパネルが、飾られました。
受賞された おふたりのご家族や、関係者もお招きし、盛大に執りおこなわれた贈呈式。
受賞者に贈呈したのは、正賞として、雨宮 淳 氏 作のブロンズ像と賞状、副賞として賞金100万円の目録です。
「上野さんは、地域福祉の最前線に立つ一方、大学で日本の福祉を担う、新たな人材も育成してきた」と、上野さんの推薦者、社会福祉法人 豊島区社会福祉事業団の横田 勇理事長。
「私たちのソーシャルファームの活動が広がっているのも、賛同いただいた、上野さんの行動力の賜物です」と、 NPO コミュニティシンクタンク あうるず の菊池貞雄理事。
「こんな素晴らしい賞をいただけて、新たな目標に向かって動き出すためのよいきっかけになりました」と上野容子さん。
「村上さんは、障害者福祉の夢を奏でるシンフォニーのコンダクター」と村上さんの推薦者、社会福祉法人大分県社会福祉協議会 大分県身体障害者福祉センター の塩﨑政士参事。
「おふたりの活躍の中心には、いつも利用者さんがいる、それがなにより大事なこと」と、選考委員を代表して、きょうされん の藤井克徳専務理事。
「今後も障害のあるかたに働く喜びと、尊厳ある生活を提供してほしい」と、厚生労働省 社会、援護局、障害保健福祉部の橋本泰宏部長。
「利用者さんの働く姿を見ることで、地域のかたの障害者への理解は深まり、いろいろな形で、私たちの活動を応援いただけるようになりました」と村上和子さん。