秋田県の南東部にある、8つの市町村が統合して生まれた大仙市。統合された中で最大の し であった大曲は、大仙市の中央部に位置し、日本有数の花火の街として知られています。 JR 東日本の大曲駅から、徒歩で約5分。商店街の中にある障害福祉サービス事業所、ほっぺは、2006年に、障害者のクロネコメール便(後に DM 便)配達事業をスタート。6名がメイトさんとして登録し、その中の4人が中心となって、徒歩で毎日、元気に配達しています。
当初の不安を、メイトさんのやる気が消した。
ほっぺの奈良克久施設長は、 DM 便を始めるにあたって、不安があったそうです。大仙市の冬は、気温がマイナス10度以下になったり、降雪は2メートル以上のことも。つららが落ちてきたり、ブルドーザーで除雪後の道はツルツル滑るなど、危険なことが多く、また、夏になると気温が30度を超える日も。この厳しい気候の中で、利用者さんたちは嫌がらないだろうか、果たして安全に配達ができるのだろうか、と悩んだのです。
「ところが、どんな暑さや寒さでも、たとえ吹雪の日でも誰も文句を言わない。むしろ積極的に配達に出かけようとするんです。仕事をしたいという、みんなのやる気が、私の不安を消し去りました」。 DM 便配達事業を引き受けて良かった、と話します。
毎朝、大きな声で挨拶を練習。
ほっぺの朝は、朝礼と、挨拶の練習から始まります。「おはようございます」、「ありがとうございます」、「お先に失礼します」と、みんなの大きな声が響きます。きちんと挨拶ができることによって、仕事への意識が高まり、一般就労に繋がる、と考えられているのです。そして、その後、全員で掃除。それぞれの仕事の分担が決まると、一斉に作業の場所に移動し、ほっぺの一日が動き出します。
DM 便モードにスイッチオン。
DM 便の担当者は、テーブルにあつまり、仕分けを開始します。エリアごとに分類し、地図にマークをしながら配達先を確認。配達ルートを決定して、あっという間に準備が完了しました。職員は、配達の順路についてのアドバイスをするだけ。ほぼ、メイトさんたちに任せています。
職員の今野充さんは、メイトさんたちの仕事ぶりについて話します。「 DM 便の仕事に はいるときは、みんなが一気に DM 便モードに切り替わります。スイッチがはいるんですね。そして、嬉々として出かける。とても頼もしいですよ」。
腰が痛くなったチームメイトに、肩を貸してサポート。
配達に出かけたのは、4人のメイトさん。しかし、あいにく、取材日は雨が降っていました。雨による歩きにくさなどから、途中でメンバーのひとり、鎌田瑞希さんが、腰に手を当てながら歩き出します。時々、座って休む鎌田さんに、さりげなく肩を貸す、伊藤翔太さんと、山中諒太さん。職員の鈴木たえ子さんが、「事務所の車で、迎えに来てもらおうか」と声をかけますが、最後まで配達したい、と主張。鎌田さんは、ついに歩きとおしました。メイトさんたちのチームワークの良さと、仕事への意識の高さが感じられた出来事でした。
メイトさんのとおる時間が、街の人の時計がわりに。
「ほっぺのメイトさんたちが家の外をとおると、そろそろお昼かな、お茶の時間にしようか、って。まるで時計がわりですよ」という声が届くそうです。また、見知らぬ人に、利用者さんたちがからかわれていたりすると、街の人が助けてくれることも。
「これは DM 便配達や、年間70回以上のイベントへの出店をとおして、利用者さんたちが、街に溶け込んでいる証拠」と奈良施設長。「同じ街の仲間のように思ってもらえている、と感じます」。
DM 便にとって欠かせない、重要な存在。
ヤマト運輸秋田主管支店、秋田大曲支店、三浦信也支店長は、「真面目な取り組みを改めて知った。 DM 便には欠かせない存在」と、ほっぺの熱心な仕事ぶりを高く評価します。「これからも、さまざまな要望に、前向きに応えていきたい」と話します。
ヤマト運輸秋田主管支店、サービスセンター、佐々木秀和センター長は、「一生懸命、そして、楽しく仕事をしていることを知って、嬉しかったし、感動しました。これからも、安全第一で続けてほしい」と結びました。
行き交う街の人から、「頑張って」と声をかけられる、ほっぺのメイトさんたち。いつも明るく挨拶を続けて、楽しそうに仕事をしていることが、今に繋がりました。
「いつもの街を歩いても、知らないところを見つけると、新鮮に感じる」と話す、菊地望実さん。「いろんなポストに入れたり、いろんな人に渡したりできるのが楽しい」と、戸井田章吾さん。そんなメイトさんたちは、ほっぺに笑顔を咲かせて、今日も元気に、街の中へ出かけて行きます。