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私たちの、賛助会費が活かされています。障害者 給料増額 支援助成金。助成先レポート。 Vol. 39

仕事の厳しさが、新しい自分への一歩になる

大分県の南、農林畜産業が盛んな豊後大野市は、源泉数、湧出量ともに日本一で知られる、別府温泉から車で約1時間です。この地で、リネンサプライ業を営む企業が、 A 型事業所として、関連会社を立ち上げました。企業が率先して福祉事業に取り組む理由と、そこで働く利用者の姿を追いました。

合同会社ロイヤルウォッシュ。

大分県豊後大野市犬飼町。

おんせん県を陰で支える大工場

静かな里山の風景が広がる犬飼町に、平均月給が9万円を超える事業所があります。川沿いの緑の中、突然現れた工場に一歩踏み込むと、大きな機械がうなりをあげて、活気にあふれていました。

A 型事業所、合同会社ロイヤルウォッシュは、23名の障害者を雇用するクリーニング工場です。地元でリネンサプライ業を34年間続けるリファイン大分の第一工場を移管する形で、2013年に設立されました。

扱う洗濯物のほとんどが、ホテルや旅館のリネンです。おんせん県、おおいた、の異名で知られる大分県。営業エリアは、別府や、佐伯、由布院から、県境を越えて、くろかわ温泉まで。約170施設から請け負っています。そして、「最近、問い合わせが増えてきたのは、高齢者向けグループ ホームの私物クリーニングですね」と、副代表の宮迫奈緒美さん。ちなみに、この工場で1日に処理する洗濯物の総量はおおよそ2万枚。10トンにも上るのだとか。それだけに、「まだまだ、採用したいですね。あと10人くらい、フルタイムで働けるかたが欲しいです」と、さらなる障害者雇用にも意欲的です。

給料が、利用者の生活を変えていく

立ち上げから、苦労らしい苦労の記憶がない、と笑う宮迫副代表。作業が多岐にわたり、本人の向き不向きに合わせて適材適所を探せるのは、クリーニング業の利点としたうえで、「福祉面のサポートに関して、正直、うちは手薄だと思います。仕事面に関しては、休みや、遅刻にはかなり厳しいです。でも、意識の高いベテランのパートさんたちと一緒になって働くうちに引き上げられるんでしょうか。最初は4時間勤務だった利用者さんが、今では、フルタイムで働いていたり、精神障害でも休むかたはほとんどいません。むしろ、繁忙期には、日曜出勤にも応じてくれたりして、助けられていますね。本当に」。

利用者のひとり、上野博孝さんは、いくつかの職場を経験してきましたが、今の職場が、「一番合っている」と言います。これまでは B 型事業所で給料は3万円ほど。しかし、同じ時間で倍は稼げるようになり、収入と生活が安定しました。十年越しの夢だったエレクトーンも購入し、現在の腕前は7級。将来、エレクトーンの専門学校に通いたい、と定期積立も始めているそうです。

仕事を通じた福祉事業だからできること

宮迫奈緒美さんの兄で、ロイヤルウォッシュと、リファイン大分の代表を兼務する宮迫賢太郎さんに、目標とするところについて伺いました。

「私たちにできることは、仕事を通じた支援なので、生活部分は専門的なかたに委ねたいと思っています。では、何ができるかといったら、稼ぐ能力を身につけていただくことと、それに見合った賃金をちゃんと払うこと。この点に特化して、しっかりとやっていきたい」と、その役割を捉えています。

そもそも、ロイヤルウォッシュの設立には、賢太郎さんの苦い経験がありました。10年ほど前のことです。

耳の不自由な女性が、ハローワークの紹介でリファイン大分にやってきました。仕事上の問題は何もありませんでしたが、休憩時間などで周囲とのコミュニケーションがうまく取れずに結局、半年ほどで退職。以来、「もっと、何かできることがあったんじゃないか」と、ずっと引っかかっていたそうです。あるとき、 A 型事業所を企業としておこなっている、知り合いの弁当店を視察する機会を得ました。そこで湧き起こったのが、「支援員が一緒に付いて働けば、むしろ企業のメリットを生かして、障害のあるかたにも働いてもらえるのではないか」との確信でした。

今年の7月、サムエなどの畳みを自動化するガウンフォルダーを、当財団の助成を得て導入しました。本格稼働はこれからですが、手の空いた人員を、需要が増えつつある私物クリーニングへ再配置すれば、さらなる給料アップが目指せます。できたら、「利用者さんにとって交通の便の良いところに、もうひとつ A 型事業所を作りたい」。副代表は、そう最後に顔をほころばせました。

半乾きのシーツをクリップに止め、広がった順にローラーに。乾燥、アイロン、たたみまで自動化されている。

上野博孝さんは、たたみ を担当。

「雇用保険は全員加入ですが、社会保険に加入できる利用者さんを増やしたい」。副代表の宮迫奈緒美さん。

「他施設の利用者さんにも、働く場を提供したい」と語る、代表の宮迫賢太郎さん。

全体の流れを把握し、洗濯物の投入量を管理する、松井拓哉さん。

助成によって新たに整備された、ガウンフォルダー。広げたサムエをセットすると、自動的にたたまれてくる。人海戦術で対応していた、たたみ作業がひとりでこなせるようになる。

浴衣をハンガーに掛けると、乾燥され、たたまれる、浴衣たたみ機。

労働組合 支部 執行委員長、助成先訪問、Series 34

ヤマト運輸 労働組合、大分支部 書記長、高瀬 哲也さん。

働くことへの熱意、歓びは変わらない

たくさんの障害者のかたが働く、これほど大規模な施設は、初めて拝見しました。皆さん、何しろ一生懸命。そして笑顔で働いている姿を見て、自分の中で持っていたイメージが変わりました。

組合と会社が一体となって、障害者を応援していこう、という気持ちが盛り上がった結果、今年の夏のカンパは、前年より多くの金額をお預かりすることができました。そうしたお金が、このような施設で、有意義に使われることは、本当に良いな、と強く感じました。

DM 便の仕分けや、配達に、大分支部で従事している障害者のかたもいますが、私たちと何も変わりません。改めて実感しました。

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