生活介護事業所、自由工房が、クロネコメール便事業(後に DM 便)を開始したのは、2009年。職員が、利用者の工賃アップのための仕事を探していた時、外部研修で、この事業のことを知りました。メイトさんの希望者を募ったところ、2人が手を挙げたため、まずはチャレンジしてみよう、とスタート。それから約10年。2人は、 DM 便配達という仕事に、格別の情熱と、愛情を持って取り組んでいます。
すべてを任せて安心。職員は最終チェックだけ
DM 便配達を担当するのは、メイトさんの石川潤さんと、佐々木康太さん。仕分けから配達冊数の記録まで、すべてを任されています。地図は手作り。新しい住宅が建つと地図に加えるなど、随時更新しています。集合住宅の転居、退去者はパソコンでリスト化。部屋番号と、名前を必ず確認します。
仕分け作業では、佐々木さんが DM 便の住所と宛名を読み上げ、石川さんが地図に配達先をマーク。 DM 便を番地順に並べて、配達ルートを決めると完了です。石川さんがお休みの金曜日は、佐々木さんが、この作業をすべて1人でおこないます。最後に、職員の中山雄太さんがチェックして、配達の準備が整いました。
冬のホワイトアウトの日は、配達を断念
自由工房は山側にあり、配達路の多くが坂道です。札幌市は、12月から4月の終わりまで降雪期間。時には、5月の初旬まで雪が降ることもあり、1年のほぼ半分、道路は雪で覆われています。雪が降ると、ロード ヒーティング設備を施された道路以外は、道の両側に積み上げられた雪で道幅が狭くなって、歩きにくい状態に。とりわけ坂道は凍って滑りやすくなるため、注意が必要です。吹雪の日など、危険だと思われる日には、職員が、施設より上の、山側方面だけ、配達をサポートします。
また、冬季に何度かある、ホワイトアウトと呼ばれる、数メートル先も見通せなくなる暴風雪の日は、職員が判断して、配達を中止します。
「メイトさんがドライバーさんに直接電話をして、代わりに配達してほしいとお願いします。仕事意識が高いので、できれば配達したいはず。でも、彼らが自分で伝えることで、責任を果たしたと感じるようです」と職員の中山さんは話します。
T シャツの背中に熱い言葉。ブログも綴る日々
「場所に届けるんじゃない、人に届けるんだ」。メイトさんの佐々木さんは、この、ヤマト運輸の CM のキャッチフレーズに感動して、ユニフォームの下に着る T シャツの背中に、同じ言葉を手書きしています。毎日の配達冊数を記すノートの表紙に書いてあるのは、ヤマト隊というチーム名。ヤマト運輸の仕事をすることに幸せを感じていることが、そこここに感じられます。
また、佐々木さんは、自由工房のホームページに、自由工房ゆかい日誌というブログを連載。ブログは毎回、「こんにちは、クロネコ ブログ便公式担当の K です」というフレーズで始まります。カタログが70冊もあった、というニュースや、夏の配達は暑くて、焦げるをとおり越して、干からびる、など、ユーモアたっぷりの楽しい内容も。そして、ブログの最後はいつもこのフレーズで締められています。「場所に届けるんじゃない。人に届けるんだ。また来月」と。ヤマト隊の熱い想いが伝わってきます。
やりがいを感じながらの仕事ぶりが、すばらしい
ヤマト運輸 札幌 新発寒支店、加藤志麻 支店長は、仕事ぶりに感動したと話します。「仕事にやりがいを感じていることを知ってうれしい。週に5日の配達を長く続けていることや、トラブルも、事故もないことはすばらしい」。エリア拡大も考えたい、と語ります。
ヤマト運輸 札幌 主管支店 サービスセンター 菊池光寿、センター長は、「誤配もほぼなく、安心して任せられます。表札のない家や、引っ越しの多いアパートなどがたくさんあって、リスクも高い中、しっかりと対応してもらっています。期待通りの仕事ぶりで、ありがたい存在です」と話しました。
山を宅地開発した、このエリアには、自然が多く残っています。取材日には、配達の途中で、シカの親子、4頭に遭遇。時には、リスやヘビも出るそうです。
ここはマムシに注意、と、地図に細かく書き込むなど、配達地域をすっかり熟知しているメイトさんたち。このエリアを愛し、住んでいる方々を大切に思いながら、1冊1冊、ていねいに、人へ届けています。