つくし野会の上田和美理事長は、2009年の、もりのみの立ち上げ時から、 DM 便に取り組みたい、とヤマト運輸に申し出ていました。 DM 便の事業内容について知っていたうえだ理事長は、施設の利用者さんの仕事にふさわしいと考えていたのです。ただ、近隣エリアでは、すでに担当のメイトさんがいたので、叶いませんでした。しかし、6年後。そのメイトさんが引退するタイミングで、エリアを引き継ぐことに。そして、ついに2015年、事業をスタートさせたのです。近隣から始めた担当地区は、やがて農地などを含む地区を加えて、3地区に。5名のメイトさんを中心に、10名のメイトさんが協力して、かなり広いエリアを、徒歩や、さんりん自転車で配達しています。
朝の仕分けは一人。全エリア、責任を持って担当。
配達を受け持つメイトさんの梅本勝己さんは、職員に勧められて、仕分けも担当。始めてみると、几帳面な梅本さんにぴったりの仕事でした。
まず、3つの地区の DM 便を番地別に分け、ラミネート加工した地図に、配達先をマーク。梅本さんが配達を担当するエリアの DM 便は、番地順に並べながら、配達用のトートバッグへ入れます。梅本さんが担当しない地区の DM 便は、番地別に、仕切りのついた段ボール箱に分類。それを、職員がトートバッグに小分けして、配達するメイトさんに渡すという手順です。
最後に、地図にマークした配達先の件数をカウント。すべてを合計して、ヤマト運輸から届いた DM 便の総数と合うかどうかを確認します。この日の DM 便は全部で34冊。流れるような仕事ぶりで、あっというまに仕分け作業は終わりました。
地図にはポストの位置や、フルネームを記入。
ポストは玄関先にあるとは限りません。 DM 便配達を始めた当初は、住宅のポストの位置がわからず、見つけるのに時間のかかることが多かったとか。今ではポストの位置をすべて地図に書き込んでいるため、初めてのメイトさんでも迷わずに配達しています。
また、このエリアは同じ姓が多いのですが、苗字しか書かれていない表札がよくあるため、地図にフルネームを書き込んで、間違わないよう工夫しています。一目でわかるように、番地ごとの色分けも。地図は新しい情報を書き込んで、定期的に更新。メイトさんが配達先を見つけやすいように、職員たちは知恵を絞っています。
仕事をとおして、たくましくなっていく。
つくし野会の、上田和美理事長は話します。「最初は、ヤマト運輸の北葛城支店のメール便リーダーの山本智之さんに2日間、手取り足取り、つきっきりで教えていただきました。端末機でスキャンする音に戸惑ったり、入力しないで投函しようとしたり、ピンポンを押してしまったり、思いもかけないことだらけでした」。しかし、ひとつひとつ乗り越えながら約5年、 DM 便配達を続けてきました。今はひとりひとりが成長していることに気づくと言います。
「みんなが変わったのは、 DM 便配達で仕事の意識が芽生えたこと。たとえ上手くできなくても、仕事以外では得られないものがあります。やりたいと手をあげてくれますし、やりたい仕事をやっているという楽しさで、少しずつでも覚えていく。それに、なんでもへっちゃらだよ、と明るい。仕事をとおしてたくましくなっていると感じます」。
配達の品質が高い、任せて安心なパートナー。
ヤマト運輸奈良主管支店 北葛城支店 橋本光則支店長は、「この辺りは、たとえば10番台と100番台の番地が隣り合わせる古い住宅街。住所が分かりにくく、配達には難しいエリアです。そうした中でのしっかりした仕事ぶりは素晴らしい」と感心します。
ヤマト運輸奈良主管支店 サービスセンター 大西康司センター長は、「誤配は再発させないことが重要。そのために大切なのは情報の共有です。チェックノートを作るなどの仕事ぶりに感動しました。高い品質を保っている、頼れるパートナーだと実感。他の事業所にも、もりのみの事例を紹介したい」と話します。
配達していると、「おはよう」、「頑張ってるね」と町の人が声をかけてくれます。メイトさんをいつも見守ってくれていると感じる、温かさが漂う町。もりのみという名前の通り、まわりの人々に育まれながら、ひとりひとりが仕事を通して実を結んでいく。そんないちにちが今日も始まっています。