ヤマト福祉財団 小倉昌男賞の贈呈

第15回 受賞された方々


ヤマト福祉財団 小倉昌男賞

宮嶋 望さん 農事組合法人 共働学舎新得農場 代表
特定非営利法人 共働学舎 副理事長
宮嶋 望さん

・十勝ナチュラルチーズ連絡協議会 副理事長
・北海道ブラウンスイス協議会 会長
・新月の木国際協議会 副理事長

【略歴】

1951年
群馬県前橋市生まれ、東京育ち
1974年
自由学園最高学部卒業、卒後論文は植物生態学で「森の植生遷移」
米国ウイスコンシン州で酪農実習
1978年
ウイスコンシン大学(マディソン)のDairy Science B.S.取得、卒業
北海道上川郡新得町に入植、共働学舎新得農場を開設
有機栽培で野菜づくりも始める
1984年
新得町特産物加工研究センターにてチーズ製造の研究開始
1990年
「ナチュラルチーズ・サミットin十勝」を企画、開催
フランスAOCチーズ協会(ANAOF)Jean Hueber会長を招聘
1992年
畜産基地建設事業でチーズ工房・牛舎・搾乳室を建設
1993年
新牛舎・チーズ工房使用開始、チーズ製造技術講習会を開催
1998年
第1回オールジャパン・ナチュラルチーズコンテストで「ラクレット」が最優秀賞
2004年
第3回山のチーズオリンピック(スイス)で「さくら」が金メダル・グランプリ
NPO法人日本有機農業研究会認定 有機農業アドバイザーに就任
2005年
十勝・帯広でのナチュラルチーズ国際会議「コミテ・プレニエ・フロマージュ」企画・開催委員就任
2006年
Monde Selection で「さくら」が金賞
2007年
Monde Selection で「さくら」「笹ゆき」が最高金賞
第5回山のチーズオリンピック(ドイツ)で「さくら」が金メダル、「エメレット」が銀メダル。国際貢献賞もあわせて受賞
2008年
G8北海道洞爺湖サミットで「さくら」が日本代表に選抜される
2009年
平成天皇御成婚50周年記念祝賀会に「さくら」が供される
2010年
北海道「産業功労賞」を受賞
フランスのギルド・フロマジェ・エ・コンフレリー・ド・サントゥギュソ゛ン協会より宮嶋が「ギルド・デ・フロマジェ」の称号を授与される
2011年
第8回All Japanナチュラルチーズコンテストで「さくらのアフィネ」が金賞受賞
2013年
第20回北海道加工食品コンクールで「ヤチヤナギ(熟成タイプ)」が北海道知事賞受賞
第34回食品産業優良企業表彰で宮嶋がマイスター部門で農林水産大臣賞受賞

受賞者の素顔

【推薦者】 菊池貞雄さん
(特定非営利活動法人コミュニティシンクタンクあうるず 専務理事)

【推薦理由】
 宮嶋さんは、1978年に北海道新得町で農事組合法人共働学舎新得農場を開設し、現在代表及びNPO共働学舎副理事長を務めています。
 共働学舎新得農場は、設立してから今年で36年目になり、社会的に就労が困難な方々とともに生活を行い、学び、農畜産物を生産・販売しています。それにとどまらず、これまでに数多くの国内外でのチーズコンテストで受賞し、日本全国のシンポジウムでこれまでの取り組みを講演しています。今日に至るまで、そういった就労が困難な方々の仕事づくりや雇用の創出、また働く喜びと生きがいをあたえてきたことから、今回貴財団の小倉昌男賞に農事組合法人共働学舎新得農場 代表 宮嶋望さんを推薦いたします。
 以下に宮嶋望氏の歩みを述べます。
 新得農場は、町有地30haを無償で借り受け、6人で始めました。現在は自閉症、癲癇、弱視、統合失調症、躁鬱、引きこもり、LD、アスペルガー症、ホルモン異常症、サリドマイド症候群、舞踏病、ホームレス、DVなど社会適応の難しかった様々な困難を背負った人たちや施設での受け入れが困難な人々約70名を受け入れ、共に生活する場、そして働く場を作り出してきました。ひとりひとりが役割を見出し、家事・仕事において分担・分業し、心や体に問題を抱えた人々が農の取り組みを通じて自立し、自己実現を図っています。ここでは「障がい者」「福祉」という言葉があてはまらない取り組みが行われています。
 現在、67haの農地で、乳牛120頭、肉牛5頭、母豚40頭・種豚1頭、鶏206羽、羊20頭を飼育し、有機野菜も3haで栽培しています。
 加工については、農産物を加工し、チーズ・ソフトクリーム・クッキー・ケーキ・パンなどを生産しています。ある自閉症のメンバーが、自分で1年間働いて貯めたお金全額(約15万円)を自分の意思で「24時間テレビ 愛は地球を救う」に寄付したことが町長に伝わり、その感動がきっかけとなって1993年に敷地内に町の全額補助により「新得町特産品加工研究センター」が建設されたことが今日の食品開発・加工の大きな礎となりました。
 加工品や野菜は施設内の交流センターで販売されているほか、レストランとしてチーズやワインも楽しめるようになっています。
 特にチーズはインターネットやFAXでの注文販売も行っていて、帯広市内の百貨店で取り扱うほかワインバー、居酒屋でメニューとして提供され東京の飲食店にも出荷していますが、チーズ生産には弱みとなる傾斜地でありながらも、ゆっくり丁寧な作業が要求される生産に従事して、高い付加価値を生み出しています。例えば、搾乳した牛乳は電動ポンプで加工施設に運ぶとその過程で電位が失われ固めることが難しくなるため塩化カルシウムなどを添加しますが、傾斜を利用して運ぶことにより無添加のおいしいチーズの生産に繋がっています。
 ここで生産されるチーズが世界で数々の賞を受賞したことにより、新得町の知名度もあがり、年間2万名が訪れるようになりました。現在では地域の関係団体や個人との連携による事業を営み、地域に貢献しています。


共働学舎新得農場
年間売上
 2億1400万円
自労自活人数
 大人59人 子供11人
給料と暮らし
生活費等支払規程を元に月額1万円~6万円を受け取っている。食事や居住費にかかる費用は一律1万円。自家用の野菜や卵・牛乳も取り入れ、子供の教育費など法人の貸付制度も設けるなどの工夫もして、農場内で“自労自活”。共働で個々の暮らしを支えている。



ヤマト福祉財団 小倉昌男賞

佐伯康人さん 株式会社パーソナルアシスタント青空 代表取締役
佐伯 康人さん

・NPO法人ユニバーサルクリエート 代表理事
・農業生産法人ネイティブ・サン 代表

【略歴】

1967年
福岡県生まれ
1990年
WIZKIDSのボーカルとしてNHK『BSヤングバトル』四国大会優勝し、全国大会に出場。インディーズデビュー。上京。
1991年
結婚
1992年
東芝EMI CDデビュー。
1997年
家業の「佐伯電器」を継ぐために帰郷。
2000年
6月、不妊治療の末に三つ子を授かる。しかし3人とも、出産時に脳へ十分な酸素が供給されなかたため重度の障がい(脳性まひ)を持つことになる。
(“なんとしても子供たちを立たせたい“と会社を休職して、リハビリや脳・身体の勉強、理学療法、作業療法を学び、イギリスのリハビリ療法に出会う。
障がいを乗り切るためには、家庭内の子育てだけでは不可能で、地域ボランティア『三つ子ちゃんを支える会』に支えられ、障がい児の子育てノウハウを確立させていく。)
(たくさんの障がいのある子供たちを通して、親・特に母親の苦悩に触れていき、また自身の体験から、行政サービスを利用する中でその多くが「利用者で家族の立場ではなく、事業所都合のサービスである」と感じる。一方で北欧に、“支援者一人ひとりが、障がい者一人ひとりと向き合い支援する“という『パーソナルアシスタント制度』がある事を知り、自らもパーソナルシスタントを目指して障がい児の日常生活のための事業に取り組んでいくこととなる。)
2003年
居宅介護事業 開始
2004年
訪問介護事業 開始
2005年
『有限会社パーソナルアシスタント青空』を設立
児童デイサービス 開始 「こどもデイ青空」開所
福祉タクシー事業 開始(自分たちを支えてくれた地域の方々にの恩返しをするため、高齢者への福祉タクシーや訪問介護事業に取り組む。)
「NPO法人ユニバーサルクリエート」を設立
(障害者の賃金をより向上させるために様々な縁を活かす活動を松山青年会議所の福祉委員会のメンバーと共に立ち上げる。)
2006年
重度訪問介護事業 開始
営利部門「メイド・イン・青空」事業開始
2009年
就労継続支援B型事業 開始
2010年
『奇跡のリンゴ』で有名な木村秋則さんの手ほどきをうけて「常識にとらわれない、人と作物が互いに育っていく無農薬自然栽培」木村流農法を完全実践していく。
2010年
児童デイサービス 「こどもデイ青空第2」開所
2012年
児童デイサービス「東予こどもデイ青空」開所
2013年
『株式会社パーソナルアシスタント青空』へ移行。
放課後等デイサービス 「こどもデイ青空壬生川」開所
2014年
放課後等デイサービス 「こどもデイ青空紺屋町」開所
2014年
11月多機能型事業所 「砥部こどもデイ青空」開所

【推薦者】 津田和泉さん
(株式会社ココシマ 代表取締役)

【推薦理由】
 佐伯康人氏は、自身が三つ子の障害児を授かったことをきっかけに、福祉の世界に携わることになった人物です。その時に見学した福祉作業所が、どこもクッキーを焼いて販売している様子を見て、下請けではない仕事を作ろうと決意しました。
 自身の住む愛媛県の特産品を活用した様々な商品開発をしている時に、支援者の一人から小さな農地を借りたことがきっかけで、農業を開始しました。その頃私は、「NPOを支援するNPO」で各地のNPOをサポートする仕事をしており、佐伯氏の事業を担当していました。当時は農地の土づくりに励んでいる時期でその後、「奇跡のリンゴ」を育てた農業家・木村秋則氏に師事して、無肥料・無農薬・無除草剤の自然栽培にたどり着きました。農業や除草剤のコストはゼロで、堆肥を作る手間もかからず、障がい者が自らの個性を活用してつくる米や野菜は安心して食べられる上、味のレベルも非常に高いです。市場平均の約3倍で取引され、現在では約20人の障がい者に平均5万円を超える給料を支払っています。さらに、高付加価値の農業を目指す全国の福祉施設へ技術指導を実施しています。
 全国の福祉施設の中でもトップクラスの給料を支払う佐伯氏の農業はビジネスとして優れており、志は高く、先行事例として学ぶことが多いと感じます。
 この佐伯氏の事業に深く共感し、同氏を強く推薦します。

メイドイン青空(就労継続支援B部門)の状況
耕地面積
11ha (33,000坪)
内訳 田 2ha  畑 4ha 果樹 5ha

収穫
自然農法米 150俵以上を生産  平均卸価格の約3倍(1俵 32,000円)
野菜 年間100種を栽培 果樹 みかん・梅 加工品類(梅干しなど)

農産物売上 
通販 750万 ・ 卸売 230万      計980万円

障害者への支払給料
年間862万円(18人)を時給制で所得を保証していて平均5万円を超える。

経費について
無農薬・無肥料のため、費用は耕起作業にかかる費用が中心で年間120万円程度

今後の展開について
自然栽培は、価値の分かる消費者とつながるためネット通販が主な売上を締めるが、店舗を持つことで、地元消費にも力を入れる。米については技術が完成しているので、今後は、裏作の玉ねぎ栽培に注力して収益を上げる。