ヤマト福祉財団 小倉昌男賞の贈呈

第6回 受賞された方々


ヤマト福祉財団 小倉昌男賞

太田 勇さん 社会福祉法人調布市社会福祉事業団 知的障害者通所授産施設 すまいる 施設長

太田 勇さん

【推薦者】 西尾 隆さん(国際基督教大学教授、ラーニングセンター長)

【推薦理由】
 調布市社会福祉事業団知的障害者通所授産施設「すまいる」施設長の太田勇氏は、設立準備の段階から同施設の運営にかかわり、2000年からパン工房での製造・販売を通して、利用者の知的障害者たちに働く喜び、人と交流する楽しさ、厳しいマーケットで収入を着実にあげていく充実感を与え、あわせて利用者と地域社会との接点を拡大しています。私はすまいるパン販売所の一つである国際基督教大学(ICU)で「サービス・ラーニング入門」(奉仕学習)のコースを担当していますが、授業に同施設のスタッフを呼んで活動紹介をしてもらう一方、学生たちも施設見学や販売ボランティアを通して、太田氏のチャレンジ精神と「すまいる」の活動から多大な刺激と勇気を得ています。
 太田氏の業績で特筆すべき点は、2002年3月に「バイバイプロジェクト事業計画書〜月額工賃5万円を実現するための手順〜」を策定し、それを計画期間内の2005年3月に達成したことにあります。計画時点で月額1万円余りだった工賃を(授産施設の現状から見てこれ自体決して低い額ではありません)、一気に5倍にするという大胆な企てでしたが、これを実現しえたのは、太田氏の明確なビジョン、周到な計画と経営戦略、粘り強い実行力によるものにほかなりません。
 ICUでの販売は、すでに食堂と売店がある中での出店のため2001年に一度は頓挫しましたが、太田氏の再挑戦と、体験学習で「すまいる」のユニークさを知った学生たちの運動を通して、翌2002年秋からスタートしました。学生も教職員も、授産施設でつくられたパンだから買うのではなく、おいしいから買っていると言っており、その声が利用者の喜びとやる気をさらに高めています。2004年度の年間売り上げは3,531万円(ICUで738万円)に達し、販売実績はまさに右肩上がりです。
 私の専門は行政学・地方自治論で、農林省や商店街など行政に依存し自立が困難になっている分野をいかに活性化するかを考えることが多いのですが、太田氏と「すまいる」の実績は、ゴマカシの効かない市場原理の中にあえて身を置き、挑戦していくことが新しい希望につながることを証明しています。
先日、夏休みに入ったキャンパスで私は食堂に向かっていたのですが、若い男性の販売員が明るく大きな声でチラシを渡してくれました。思わず私は方角を変えて「すまパン」を買いに行き、スタッフにチラシの効果を話しました。学園祭でもなければ、昼食の宣伝など誰もしません。商売する者の逞しさといいますか、売ろうとする意欲と姿勢に胸を打たれました。また、工房で接した利用者の「喜んでもらえるパンをつくろう」というプロ意識にも感銘を受けました。この逞しさ、意欲、プロ意識こそ、全国の障害者だけでなく、今元気のない日本人がもっと学んでいいのではないでしょうか。
とはいえ、太田氏の心の芯にあるものは、障害をもつ人たちに対する優しさと愛情です。それがスタッフに伝わり、利用者に伝わっているからこそ、一見厳しい目標達成に向けて力強いチームワークが築かれるのでしょう。「すまいる」の笑顔は周囲の人たちに、地域社会へと、確実に広がっています。

ヤマト福祉財団 小倉昌男賞

宮崎 潔さん 社団法人愛知県セルプセンター 名古屋市障害者雇用支援センター 所長

宮崎 潔さん

【推薦者】 近藤正臣さん(社会福祉法人 名古屋ライトハウス 専務理事)

【推薦理由】
 「障害者がもっと働ける社会を創る」。障害者の希望であり雇用支援を行う者にとっては、「プライド」を懸けた真なる時代の到来である。その先駆者である宮崎潔氏を推薦し、その実績及び理由を下記に記します。
 宮崎氏は、愛知県・三重県の職業センターの職員としてのキャリアを買われ、平成11年4月開設の社団法人愛知県セルプセンター運営の名古屋市障害者雇用支援センター所長に就任。これまでに170名の訓練を終え、138名を企業に就職させ、全国14の障害者雇用支援センターの中でもトップの実績です。
 こうした実績を残し得たものは、(1)訓練内容は極力企業で働くことを基本とし、働く姿勢(社会性の涵養)を植え付けることを重視したもの。(2)実習の為の協力企業(受入企業ともなる)の開拓。(3)就職の可能性のある者は出来るだけ早く実習に入る。(4)徹底した定着支援(職場訪問年間1,200回)。(5)アフターファイブ支援による仲間意識を育て、生きる(働き続ける)意欲を育てる。(6)失敗者の再訓練、一般就労困難者の福祉的就労の斡旋等による本人、家族に対する安心感の付与等です。
 こうした実績から、16・17年度は福祉施設(主に授産施設)からの受け入れが50%を超えました。更には当センターの利用は名古屋市内在住者に限定されるため、外来相談(16年度 677件)に力を入れ市内在住者以外の方にもセンターの持つ資源を提供、直接就職に結びついた者も何人かいます。
 最近では、自閉症、アスペルガー等の発達障害者の相談事例も増え、人材があれば支援の具体化を図っています(現在、名古屋市と協議中)。
 当施設とは、開設当初からの関わりがあり、入・通所者を雇用支援センターに委ね法人内でも数名就職させて頂いた実績もございます。また、障害者の適正に応じた職場の開拓と訓練を行う工夫の一環として、当施設の下請け授産作業を雇用支援センターの作業に取り入れ実践さながらの訓練を行い、より確実な雇用支援スタイルを確立されております。更には相互連携にて、訓練を終えた障害者を当施設にて雇用させて頂き成果を上げて頂いています。現在は、訓練の一環として、他授産施設(同法人内)に実習生を数人派遣し、より精力的に活動されています。企業との関わりにつきましては、事前の入念な打ち合わせを行い企業の抱える不安要素を一掃します。実習中にとどまらず採用後のフォローも積極的に行われ、障害者一人一人が職場実習当時よりも確実にスキルアップしていると評価は高く、「宮崎氏の存在は非常に心強い限りです」という言葉もよく聞かれ、信頼度の高さが伺えるところです。
 このように、宮崎氏は雇用支援センター内訓練にとどまることなくネットワークを最大活用し、企業先での委託訓練の実施など様々な職場開拓を独自に創りあげ広範囲に及ぶ戦略スタイルを確立しており、業務成績はとどまることがありません。
宮崎氏の雇用管理ノウハウにより、事業所の進むべく道を開拓する他、併せて職員育成をも徹底し未来の後継者指導にもあたっておられ、宮崎氏の多大なるご活躍ぶりは、障害者の方々の就職に向け大変意欲的であり、今後の障害者雇用の先駆者としての期待をも裏切ることのない候補者だと確信しております。熱い情熱を持ち続け、人間性豊かなお人柄の宮崎潔氏こそ「ヤマト福祉財団 小倉昌男賞」にふさわしき人物です。以上、推薦申し上げます。