ヤマト福祉財団 小倉昌男賞

風間 美代子さん

風間 美代子さん

  • 特定非営利活動法人多摩草むらの会 代表理事
  • カウンセラー
  • サービス管理責任者 就労/知的・精神
  • 東京都障害者ケアマネジメント従事者
  • 東京都相談支援従事者

【略歴】

1946年1月 中国新京にて誕生
1961年 学生時代より肢体不自由児チャリティーボランティア活動開始
1966年5月 結婚
1992年 子息が入院していた、国立精神・神経センター武蔵病院の家族会「むさしの会」を立ち上げる。
 活動の中で、講演会の質疑応答の内容を、これからの正しい精神科治療に役立つよう、医師、患者そして家族が経験と思いをまとめた「セカンドオピニオン」(医学書院)出版に協力
 → 2002年3月発刊
1994年 子息が退院後通院していた、精神保健福祉センターに通う患者の家族の交流の場を築くために自宅を集会場としての提供を開始
1997年5月 草むらの会発足と同時に副会長就任。グループホーム運営をめざし、収益を上げるため清掃やバザーでの飲食提供などの活動を開始
2004年6月 特定非営利活動法人多摩草むらの会設立同時に理事就任。東京都、多摩市などに対し、グループホームや事業所開設のための補助金獲得の粘り強い交渉によりグループホームや飲食の事業所(遊夢)等を開設
2008年6月 代表理事に就任。お弁当製造事業、菓子製造事業、公園清掃事業、布製品製造販売事業、外部飲食店での就労支援事業など、幅広いジャンルで事業を拡大
2013年8月 障害者が雇用契約を結ぶ就労継続支援A型の事業所を商業中心地のココリア多摩センターに開設

趣味: お茶(裏千家)、お花(草月流)、書道、登山

【推薦者】 坂本 光司さん
(法政大学大学院 教授)

【推薦理由】
風間美代子氏は元々は普通の家庭の主婦でしたが、子供の障がいをきっかけに、1997年、障がい者とその保護者の人々と、障がい者を支援する「草むらの会」を発足させました。その後、同組織を2004年には「NPO法人多摩草むらの会」として発展させ、2008年からは同組織の理事長として組織を牽引されています。
風間美代子氏の障がい者とその家族に対する思いと努力そして活動は自身の経験を踏まえたもので、多くの障がい者やその家族の「駆け込み寺」としての役割を見事に果たしていると思います。
今や、「NPO法人多摩草むらの会」を利用(就労)している障がい者は約300名、それを支援する職員も約120名を雇用するまでにその業務を拡大しています。おそらく、都内の福祉的就業施設としては最大規模と思われます。
行政に頼らず、自分たちで「障がい者の幸せ作りをする」という姿勢は、これからもますます期待されるソーシャルビジネスのモデルといえます。
風間美代子氏の貢献は本賞にふさわしいものと強く推薦します。

ヤマト福祉財団 小倉昌男賞

熊田 芳江さん

熊田 芳江さん

  • 社会福祉法人 こころん 常務理事・施設長
  • 精神保健福祉士
  • 社会福祉士

【略歴】

1951年 福島県生まれ
1993年 社団法人郡山社会事業協会あさかの里(郡山)に事務職として入職
1999年 精神保健福祉士 取得
2002年 NPO法人「こころネットワーク県南」を設立
2004年 生活支援センター「こころん」を開設
2005年 「里山再生プロジェクト」を始動
2006年 自立支援法の施行に伴い地域活動支援センター1型、グループホーム、相談支援、居宅介護、多機能型事業(就労移行支援、就労継続支援B型)を開始
    「直売カフェこころや」を開設・「共同作業所なごみの家」運営
2008年 グループホーム「こころんはうす」を開設
2010年 養鶏事業「矢部農場」および遊休農地を活用して農業を開始
2011年3月 東日本大震災
同年4月 社会福祉法人を取得「社会福祉法人こころん」となる。就労継続支援A型事業所「こころん工房」を開設
2012年 震災後は農業分野での復興のため畜産環境技術センターと共同研究を実施、反転耕した圃場に堆肥を入れて土壌回復を図り有機栽培に切り替える(本格的な農業分野への参入)
    大木代吉本店と6次化事業として「玉子酒」商品開発
    那須森林の牧場と「ヌシュ・クルール」の商品開発
2013年 ベクレルモニターを設置して、こころや等で販売される野菜と加工品の全品目の検査を実施し安全な基準を設けて、基準以下の食品販売を徹底する
    こころん工房の「かぼちゃプリン」福島県授産事業振興会自主製品コンクール金賞(2013年スイーツ甲子園出場予定)
    那須動物王国「カピバラスク」の商品化

【推薦者】 野中 由彦さん
(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター 主任研究員)

【推薦理由】
熊田芳江さんの最大の功績は、地域の中で地域住民と共に精神障害のある人の働く場を創り出していくモデルを開拓したことです。 熊田さんは、初めの企画の段階から、地域の人々と共に進める姿勢を貫いています。「まずは地域づくりから」との趣旨で、3年間にわたってワークショップを開き、地域のさまざまな人々とよく話し合い、当時の福島県県南地域における精神障害者のための施設の状況をふまえて、2002年のNPO法人「こころネットワーク県南」設立、2004年の「生活支援センターこころん」開設にこぎつけました。
地域の人々と共にというコンセプトは、2005年の「里山再生プロジェクト」始動、2006年の「直売カフェこころや」開設に象徴されています。「こころや」は、地元の生産者の手になる商品の直売所とカフェレストランとを融合させたもので、もともと休耕田だった土地を借り受けて建設したものです。「こころや」には、地元の農家の人たちが作ったこだわりの無農薬野菜や果物、手作り弁当、惣菜をはじめ、地元生産者によるさまざまな自慢の品物が並べられます。そのほとんどが生産者が自ら持ち寄るもので、「こころや」では、生産者と消費者の本当に顔の見える関係が当たり前となっています。「こころや」には1日約150人の来店客があるとのことで、過疎の進む地域の活性化にも大きく貢献しています。
このように里山再生と深く関わった精神障害者の働く場創りに成功しましたが、この企画の優れたところは、地域に住む人がいる限り、持続可能な仕事だということです。 熊田さんは、一般就労を希望する精神障害のある人に対する就労支援も、地域住民との協力関係のもとに展開される仕組みを用意しています。当然ながら、ひとり一人の状況を考慮して、一般就労に移行するまで、ジョブコーチが付き添ったり、勤務時間を徐々に伸ばしていったりなど、さまざまなルートが取れるように、実習先も地元の農家や企業との協力関係を土台にして徐々に広めてきました。
熊田さんは、国内外からの研修の受け入れにも積極的に協力してこられました。私は、何度も海外研修生と一緒に見学させていただきましたが、いつも障害のあるなしを超えた自由な暖かい雰囲気で交流がなされます。外国人研修生は、熊田さんの精神障害者リハビリテーションの進め方を知って、驚きと共にリスペクトしています。 "I got an answer." (私は答えを見い出しました)と言ったアフリカからの研修生の言葉もありました。
熊田さんの次の狙いは、人材の育成です。利用者の数も増え、また複雑な障害を抱えた利用者もこれからますます増えてくると予想される中で、地域に持続可能な仕事を開拓し維持していくには、なによりも人材育成が急務であることを強く意識し、将来を見据えて「こころん」が人材育成の場としてもうまく機能するように仕組みを整えています。
このような、地方のあまり条件が整っているとは言い難い地域の中で、地域住民と協力しあいながら、精神障害者の働く機会を創出し、併せて人材育成を図ってきた熊田さんの活動は、この賞に相応しいものであると思い推薦させていただく次第です。

【推薦者】 田中 志保美さん
(社会福祉法人こころん利用者の保護者)

【推薦理由】
2005年〜2010年まで「里山再生プロジェクト」として農業法人白河園芸総合センターと地元酒造会社(名)大木代吉本店と連携し、精神障がい者と地域の人達が触れ合いながら、食と農を考えるきっかけづくりをされました。地元休耕田を活用した田植え・草取り・稲刈りなどの作業は農業セラピーにもなり、精神障がい者の自立支援に繋がりました。
2010年には、こころんの鶏卵を用いた「卵酒」を共同開発して商品化。6次化事業を推進することにより精神障がい者雇用に結びつき、地域の人達の交流の輪が一層広がっています。
そして忘れもしない2011年3月11日東日本大震災直後、私たち被災者が日常の食事に事欠くさなか、「こころや」の食糧在庫を総動員し、利用者とスタッフとでおにぎりと味噌汁を作り、インフラも寸断されガソリンも手に入りにくい中、地域の人達に届けました。 大木代吉本店も酒蔵が5棟倒壊し、従業員と建設業者はガレキの処理に追われ灯りもない時届けてくださったおにぎりと味噌汁は砂漠の中のオアシスのようでした。その姿にどれほど励まされ元気をいただいたことでしょう。非常事態だけではく日々の精進を積み重ね、人々から熱い信頼を受けている熊田さんだからこそ、人と人との架け橋となり、人脈を広げていけるのだと思います。
以上の理由から熊田芳江さんを推薦させていただきます。