ヤマト福祉財団 小倉昌男賞

山内 民興さん

山内 民興さん

  • 社会福祉法人ぷろぼの 理事長

【略歴】

1948年 愛媛県新居浜市 生まれ
1973年 青山学院大学 経営学部卒業
メーカー系企業で企画及び開発関係に従事
1992年 東京でコンピュータ会社を設立
主にロボットの目や地形計測等に応用する3次元画像解析システムを開発する。
1999年 喉頭がんの手術で発声機能を失い、身体障害者3級となる
2001年 静養生活後、奈良で地域ボランティアを始める
2004年 「福祉作業所ぷろぼの」の運営コンサルタントを担う
2006年 「NPO法人地域活動支援センターぷろぼの」NPO法人格取得と同時に施設長に就任する。
奈良県生駒市で地域活動支援センターⅢ型事業を開始
2008年 NPO法人の理事長に就任
奈良県より職業訓練IT基礎科事業を受託
奈良県特別対策事業「働きがい支援事業所」に認定される
2009年 就労移行および就労継続支援A型事業開始
2010年 奈良県「奈良まほろばふるさと雇用再生特別対策事業」を受託
奈良県ITソーシャル・インクルージョンセンターを開設
2011年 PC再生事業「なら福祉3Rセンター」開設
2013年 社会福祉法人格を取得と同時に理事長に就任
2015年 放課後デイサービス事業が、経済産業省平成26年度キャリア教育アワードにて経済産業大臣賞を受賞
2016年 福祉型事業協同組合「あたつく組合」を設立
養護施設出身者に向けた若者支援に取り組む

【推薦者】 久保寺一男さん
NPO法人就労継続支援A型事業所全国協議会 理事長

【推薦理由】
 山内民興氏は、大学を卒業後に民間会社で企画及び開発関係の業務に従事され、30代後半に独立されて東京でコンピューター会社を立ち上げられ、主に画像上の情報を解析するコンピューターの開発事業を行った。しかし50歳の時、喉頭がんの手術をされ発声機能を失い、身体障害3級となった。その後、会社を整理し奈良で闘病生活をされた後に2001年に奈良にて地域ボランティア活動をはじめる。また和歌山県新宮市で過疎地域の活性化事業にも参画した。その後、ならNPOセンターでボランティアスタッフとして、環境省の助成事業「環境にやさしいエコレストラン」についての調査研究を行う。2004年秋から現法人の前身である「福祉作業所ぷろぽの」の運営コンサルタントを担い、2006年NPO法人格を取得して、10月から地域活動支援センターⅢ型事業を生駒市から受託する。その時点で施設長に就任し、現在まで12年間多岐にわたる障がい者福祉の就労支援に関わり、「働くことは人として日々を生きるための大切な行いである」との思いで事業体系を構築した。

 ご本人が奈良出身でなく、また障がい者であることから、法人の理念には、“古都奈良を大切にします。福祉のこころを育みます。などを明文化している。どのような障害のある方でも受け入れ、精神的及び経済的な自立を目的に支援活動を行っていることは評価できる。特に障害を持たれる前に、事業展開していたコンピューター関連の技術・知識を活用し、科学的根拠による、個々人が対応可能な「総合的な就労支援プログラム」を作成し、すべての利用者が体系的な訓練を受けて、卒業後に社会で自立した生活ができることを目指している。このプログラムは主に「働きたい意欲」→「健康を管理する力」→「日常生活をする力」→「職業生活を続ける力」→「仕事をする力」の5つのステップ要素で構成されている。さらに基礎訓練を受けた後にIT専門職をめざす方には、就労継続支援A型で福祉的な配慮を受けて、IT上級訓練としてWebプログラミングやグラフィックデザイン、会計処理、PCハードのメンテナンス等の実践業務を経験する職場も準備されている。

 福祉の経験こそ12年間とそれほど長くはありませんが、ご自身が障害者であることからも、特に障害者就労については深い想いを持たれ、実践してきました。事業展開の評価も含め、ヤマト福祉財団小倉昌男賞にふさわしいので、推薦いたします。

ヤマト福祉財団 小倉昌男賞

松浦 一樹さん

松浦 一樹さん

  • 特定非営利活動法人 ENDEAVOR EVOLUTION 理事長
  • 株式会社 REGEND 代表取締役

【略歴】

【略歴】
1968年 大阪府堺市生まれ
1992年 佛教大学社会学部社会福祉学科 卒業
同  年
京都府警察官 拝命
1999年 京都府警察官を退職し福祉施設職員になる
2006年 石川県白山市 第21回暁鳥敏賞受賞 「福祉と非行~元刑事と非行少年の軌跡~」
2007年 特定非営利活動法人 ENDEAVOR JAPAN 設立
統括事業長 就任
2009年 暁鳥敏賞受賞論文が漫画化される
漫画「夢を追いかけろ!」 かもがわ出版 松浦一樹原作 しいやみつのり作画
2014年 ワークチャレンジスタイル GOKENDO 設立 事業長に就任
同  年
株式会社REGENDを設立 グループホーム立ち上げ
2015年 特定非営利活動法人ENDEAVOR EVOLUTION 設立
2016年 株式会社五健堂本部長付相談役

【推薦者】 安川 淳子さん
アロマセラピーサロン クレア

【推薦理由】
はじめに

 私が推薦する松浦一樹氏は、元警察官(京都府警察少年課刑事)であり、現在は福祉の世界に大きな影響を与えている方だと思います。
 松浦氏との出会いは14年前になりますが、最初は「なぜ彼が福祉の世界に身を投じることを選んだのか?」と、とても興味を持ちました。
 松浦氏に話を聞くと、京都府警少年課に勤務していた時に知的障がいのある青年を逮捕した事件がきっかけとなり、この青年との出会いを契機に、『たとえ障がいがあっても、過去に罪を犯しても「頑張って働きたい」「やりなおしたい」と願う人たちのために、その受け皿を福祉作業所で作れないものか』との強い思いを抱き続けてきました。 その思いを実現するために平成11年3月、周囲の反対を押し切って警察官を辞職し、たくさんのリスクを背負いながら福祉の世界に飛び込むという、かなり変わった経歴の持ち主です。

松浦氏との出会い

 私は、平成10年にアロマセラピークレアとしてサロンを始めました。もともと障がい者就労支援等にも興味があり、障がい者の方にアロマハンドやプットの技術を教えたり、施設でアロマの講習をしたり、ソーシャルアロマセラピストとしての活動もしていました。 松浦氏と出会ったのは、平成16年に偶然サロンに来られたのがきっかけでした。お話をしていると情熱的で行動力があり、とても価値観が合うと感じました。その後、一緒に様々な事業をしたり、作業(競輪場ポスター貼作業)やアロマヨガサークル活動をしてきました。
 松浦氏は、大学で社会福祉を学び、当初から福祉の世界に強い関心を持っていましたが、福祉の世界にありがちな利用者を庇護することに重点を置くような福祉の考え方に強い違和感を持っていたそうです。

本当に大切なこととは!

彼はとても悩んでいました。私も「障害があるからできないだろう」「障害があるからわからないだろう」「罪を犯した人はまたするだろう」という周囲の勝手な解釈が実は大きな差別をしているのだと感じることがあります。
 そこで彼は、自分の考えに賛同してくれる仲間と共に自らが統括事業長として新たに企業と提携したNPO法人ENDEAVOR JAPAN(頑張れ!ニッボン)を立ち上げ行動をおこしました。ちょうど障害者自立支援法が施行された頃です。

業界初のシステム

 この法人は、就労継続支援AB型(AとBの連結型は全国初で全国唯一無二)の事業で全国初のステップアップシステム(B型→A型→企業内就労→一般就労)を作り上げたことが注目を集め、各種たくさんの新聞に取り上げられました。この様な道筋を作るのは並大抵のことではなかったと思います。

更に進化を求めて

 そして、この法人をさらに進化させたいとの思いから、ENDEAVOR JAPANの責任者を後継者に譲り、平成27年4月より、新たに自身が理事長兼事業長を務めるNPO法人ENDEAVOR EVOLUTION(努力して進化する)を立ち上げました。障害のある方を10万から18万の給料を支払いながら企業就労へと導き、その後つまずいても再度戻ってやり直せるスーパーAともいうべき、移行型の要素を含む就労継続支援A型に特化した事業を展開しました。
株式会社五健堂の物流業務の一部門を受託し、物流倉庫のスーパー(フレスコ)に商品を運んだ後の空コンテナのメーカー仕分けと空箱の洗浄作業をしています。この事業は、平成26年度に京都府が実施した「福祉から雇用」応援事業のモデル事業となりました。

松浦氏にとっては、利用者ではなくてファミリー

 また障がい者の自立生活を支援するため、自立支援型グループホームを開設し、 親のいない障がい者や親から虐待を受けた障がい者の方たち6名と一緒に住んでいます。自宅マンションの両隣を借金して個人で買い取り、入ってくるお金は全て支援員の給料や経費に充て、自身は無給で活動しています。利用者を朝5時に起こすとことから22時の就寝に至るまで、自立支援のために日々務められ、利用者さんも「本当のお父さん」のように思っているようです。

夢を追いかけろ!

 松浦氏は、障がい者の働きたいという思いを実現し、最終目標として一般就労できる事を 目指しています。そのためには、もっと世間一般の人々や働く場を提供してくれる企業に 障がい者の事を知ってもらうこと、また松浦氏自身の障がい者支援に対する考え方を広報 することが必要であると考えています。
  松浦氏は、警察官を辞職し、福祉の世界に入ることになって18年。『自身の思い描く福祉事業所を作ってみせる』との確固とした信念を持ち続け、努力し続けました。その強い思いを実現した松浦さんを、ヤマト福祉財団小倉昌男賞に推薦します。