第23回 ヤマト福祉財団小倉昌男賞

式典中に再生された社会福祉法人 パレット・ミルの紹介ビデオです。

中山 みち代さん

  • 社会福祉法人パレット・ミル  常務理事

【略歴】

1948年 滋賀県守山市生まれ

1970年 立命館大学文学部卒業(日本文学専攻)
同  年 東レ株式会社 大阪事務所

1972年 同社退社

1984年 社会福祉法人湘南学園 理事(1994年まで)

1989年 社会福祉法人湘南学園 養護施設勤務

1993年 社会福祉法人湘南学園 知的通所授産施設勤務

1996年 自立就労センターパレット・ミル設立(小規模作業所)

2001年 公益社団法人滋賀県手をつなぐ育成会 理事(2013年まで)
同  年 NPO法人滋賀県社会就労事業振興センター 理事(2013年まで)

2002年 社会福祉法人認可 「社会福祉法人 パレット・ミル」となる
同  年 社会福祉法人栗東市社会福祉協議会 評議員


2005年 グループホーム「パレット・ミルの家」開設

2006年 「事業所型作業所パワフル」開設
同  年 「自立就労センターパレット・ミル」就労移行支援事業へ移行

2009年 多機能型事業所パワフルと就労継続支援B型に組織変更

2014年 「特定相談支援事業所コネクト」開設

2019年 「就労支援事業所 カラフル」開設

現在に至る

【推薦者】

城 貴志さん
NPO法人滋賀県社会就労事業振興センター 理事長

【推薦理由】

候補者の中山みち代氏は、福祉業界の中でも「おかあちゃん」と他法人の職員達にも慕われる人柄。やさしく温厚なのに頼りになる、その小さな体の中にある熱い情熱と勉強熱心さによる様々な事業展開は、「甲賀忍者の忍法」とうわさされるほど、早い展開でアグレッシブである。
 中山氏が障害者と関わったのは、子育てが終わった専業主婦の時に近隣の社会福祉法人にボランティアとして関わった事から始まる。関わり始めたら、ボランティアにとどまらず、その後、正規職員、児童施設の園長となり、その法人初めての障害者施設の所長にもなる。そして、47歳の時(1995年)、「リフトで使うパレットをリユースする仕事がある」と声を掛けられ、この機を逃すまいと、一念発起。障害者作業所を自ら経営することを決意する。しかも、最低賃金保障を目指して。
 もともと、法人の職員時代から、障害者の低い工賃や特色のない作業所の羅列が当事者本位ではないと不満や疑問を持ち何とかしたい思いを募らせていた。その中でのこの仕事話は、障害者の作業でやれる!と思いが爆発したようである。
 創業時は、土地もお金も職員も何もない状況であったが、元々の友人や人脈の多さのおかげか、多くの賛同者が集まった。設立は、もちろん簡単ではなく、苦労の連続で私財までも投資したが、中山氏の忍法のおかげ?か、1996年4月に栗東市観音寺の山の中に借地を見つけ、無認可共同作業所「自立就労センターパレット・ミル」を開所された。
 「パレット・ミル」の名前の由来は、パレットのリユースを仕事にすることから、「パレットの製造工場」という意味で、また「みんながいろんな色を持ち寄って夢を描こう」という思いで名付けられた。
 設立時は、利用者は5名、職員は4名、利用者の工賃は100円。理想とはほど遠いスタートであったが、26年経った今では就労継続支援A型事業所1か所、就労移行支援事業所1か所、就労継続支援B型事業所3か所、グループホーム1か所を運営され、給与(工賃)もA型事業所で月155,490円、B型事業所においても平均80,000円と高工賃を実現している。
 高工賃が実現されているのは、中山氏の当初から最低賃金を目指す強い意思と、仕事に徹底的にこだわっているから。地元経済界への積極的な関わり・営業と、新規の事業や取引先を探すための紹介のお願いや人脈を使ったサーチなど、四六時中アンテナを張って仕事を探し周る。仕事もパレットのリユースから始まり、ブリザードフラワーや木工遊具、梱包用木枠の製造、焼き菓子製造、ブルーベリー畑農業などに止まらず、土地柄日本中央競馬会(JRA)関連の使用後の蹄鉄の飾りなどたくさんの仕事を創出してきた。また、7か所に企業の施設外就労先をみつけ、就労移行支援事業により、一般就労への移行実績もすばらしい。
 2000年前半には、パワーアップセミナーの講師を何回も務めるなど、就労支援事業や工賃の実績は、県外にも認められていた。
 また、グループホームの運営をしており、地域で働き、地域で暮らすを実践されている。 グループホーム「パレット・ミルの家」は中山氏のお人柄同様にいつもあたたかい空気で笑いが絶えない。
 中山氏がよく口にされる言葉がある。「利用者の生活がかかっている。だから絶対給料(工質)を下げてはならない」と。この言葉はパレット・ミルが働く場であることを象徴している。さらに、中山氏はこうも言う。「利用者、職員全員がよい暮らしをしてほしい。『よい暮らし』は一人ひとり違うが、お金も重要なウェイト。しかしお金のためだけに働くのではなく、しあわせのために働いてほしい」と。そんな中山氏の周りにはいつも人が集まる。「いろんなご縁をいただいて運がいいからここまで来れた」と言う中山氏だが、運も人も引き寄せてこられた人柄、努力があってこそと思う。初めて会ったころの中山氏は、60歳近かったが、いつも睡眠不足の疲れた顔で走り回っており、「大変大変」といいながら楽しそうに新しい事業を見つけていた。この留まることを知らない情熱と努力が忍法と呼ばれたのかもしれない。今は、おばあちゃんになってしまった僕らの敬愛する「おかあちゃん」をここに推薦したい。

式典中に再生された社会福祉法人ハイジ福祉会の紹介ビデオです。

山口 由紀子さん (福岡県八女市)

  • 社会福祉法人ハイジ福祉会 理事長

【略歴】


1946年 福岡県筑後市生まれ

1998年 八女地区精神障害者家族会のぞみ会役員就任

2001年 小規模授産施設八女共同作業所 所長就任
同  年 社会福祉法人八女市社会福祉協議会 評議員就任

2003年 福岡県精神障害者家族会連合会 理事就任

2006年 福岡県社会福祉協議会 委員就任

2007年 社会福祉法人ハイジ福祉会 設立 理事長就任
同  年 就労継続支援B型事業所「八女作業所」設立

2011年 日本精神保健福祉連盟会長表彰

2014年 就労継続支援A型事業所「フラワーパッケージセンター」設立

2016年 西日本鉄道株式会社の精神障害者への交通運賃割引適応

2017年 平成29年度精神保健福祉事業功労者福岡県知事表彰

2018年 厚生労働大臣賞受賞

2020年 共同生活援助「ぐるーぷほーむハイジ壱番館」設立

2022年 八女市障害者福祉推進委員就任

【推薦者】

古賀 秀木さん
社会福祉法人八女市社会福祉協議会 会長

【推薦理由】

 この度、申請する社会福祉法人ハイジ福祉会理事長の山口由紀子氏は、24年間にわたり精神障がい者に経営者として又、家族会の代表として活動してこられ現在に至っています。
 その歩みは、平坦なものではなく苦難の連続でありました。八女市社会福祉協議会が所有する社会福祉会館2階の社会復帰訓練室を借用し精神障がい者の共同作業所を運営されてきました。しかしながら、当時の精神障がい者の作業所の予算は、国の支援費の対象である身体及び知的障がい各種事業の予算とははるかに開きがあり、八女市からの単費補助金の数百万程度で細々と運営を長年されてきたところです。そこに平成18年4月から障害者自立支援法が施行され、三障がいの平等が法的に認められました。さっそく翌年19年3月に社会福祉法人認可の申請を県知事に提出し、認可を得ることが出来ま
した。
 これは、精神障がい分野での画期的なことでありました。その後、市内の銀行跡施設を借金で購入し、約15年間を通して就労継続支援B型事業所を展開し、現在はグループホームや農福連携の就労継続支援A型事業所にも取組まれております。
 平成13年に入職されてから現在までの山口理事長のご苦労は長年見守ってきた私にとっても言葉で表現できないものがあります。しかし、今もなお76才ですがハイジ福祉会理事長として福岡県精神保健福祉会連合会顧問、福岡県精神障害者家族会のぞみ会会長として現役で頑張っておられます。特に、地元八女地域の精神障がい者の社会復帰への積極的な取組や、精神障がい者の家族会への活動にも精力的に取組むなど、長年にわたり精神障がい者並びにその家族を支え続けておられるところです。
<主な実績>
 平成15年、身体・知的障がい者に適用されていた西日本鉄道株式会社の交通運賃割引を精神障がい者にも適用して頂くために、福岡県精神保健福祉会連合会副会長として自らも積極的に出向き、福岡県知事への要望、福岡県議会への要望と採択、福岡県、福岡市、北九州市など行政との協議、国土交通省九州運輸局へバス会社への働きかけをするよう求める要望書の提出、複数回に渡る西日本鉄道株式会社との直接交渉に参加し、中心的役割を果たし尽力されています。そして、全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)を通した全国での署名運動やアンケート調査の実施など、複数回の署名活動など地道に活動を続け、最終的には全国623,922筆、福岡県51,868筆の署名を持参し西日本鉄道株式会社との直接交渉を行い、平成28年12月に西日本鉄道株式会社内で正式に決定、平成29年4月1日より精神障がい者への交通運賃割引が実施されました。日本の大手私鉄でもある西日本鉄道株式会社の精神障がい者への交通運賃割引適用は、全国で精神障がい者への交通運賃割引適用の活動に取組んでいる多くの団体に勇気と希望を与える画期的な出来事となりました。
 また、この活動をきっかけに福岡市営地下鉄・日本航空・全日空についても運賃割引が開始される等、精神障がい者の社会参加に大きな実績を残されています。
<現在の取組>
 以前より利用者様の工賃アップに努められ、2021年度実績では就労継続支援B型で月額平均30,768円、就労継続支援A型では82,400円の実績を残されています。
 特に就労継続支援A型については早くより農福連携に取組み、2014年には地元JA傘下の花き部会(八女FPCガーベラ部・博多シンテッポウユリ部)と外部契約され花きのパッケージ作業を実施されております。2017年には農地を800坪取得されたのち、農協の正組合員の資格を取得され、農福連携の推進に日々取組んでおられます。このような取組が評価され九州農政局のホームページに農福連携のモデルケースとして紹介されるまでとなられております。
 以上の内容により、賞の対象5つの項目にすべて該当すると言っても過言ではなく、まさしく「この人こそ」ヤマト福祉財団小倉昌男賞を受賞するに相応しいと考え、今回この賞に推薦をさせて頂く事と致しました。