第26回 ヤマト福祉財団 小倉昌男賞

久保田 静子さん 

  • 特定非営利活動法人わかば福祉会 理事長

略歴

1925年 兵庫県加古郡生まれ

1931年 尾上尋常小学校入学

1937年 兵庫県立高等女学校入学

1941年 明石女子師範学校入学

1943年 別府町立国民学校赴任

1961年 加古川市立別府小学校特殊学級 担任、障害児との関わりが始まる。中学校の担任とも連携しながら、日頃の指導につい て話し合う中で「子どもたちの将来・親亡き後の居場所について」協議を重ねる

1967年 施設の拠点となる「小屋」を提供する人が現れる

1969年 わかば学園開園 小学校教員を退職し学園長となる。利用者56人、無認可の通所授産施設として出発

    年賀状や名刺の印刷を主な作業として工賃が得られるようになる

1970年 加古川市刀田山鶴林寺に売店を設置(駄菓子・ 文具等の販売)

1979年 私有地を提供して、わかば学園を現在地( 加古川市尾上町養田)に移転。利用者が 20名を超える

    「福祉の店わかば」オープン 農園作業開始、土地購入等学園が拡大していく菓子工房設立 クッキーの製造販売

2003年 「ふれ愛ランド」オープン(加古川町、寺家町)

2008年 バイオディーゼル燃料事業開始 時代の変遷で2022年に閉鎖

    NPO法人わかば福祉会設立

2009年 指定障害者福祉サービス事業 就労継続支援B型に移行

    グループホーム「ふれ愛ホーム本館」設立

2016年 グループホーム「森の家」設立

    兵庫県高齢者特別賞受賞

2019年 地域の方が集まる公民館に「喫茶 わかば」オープン

    創立50周年記念式典開催

2025年 100歳を迎えた今も、理事長として利用者を見守っている

 

 

推 薦 者  松本 雅也さん

特定非営利活動法人夢のたね   ゆめさき舎   理事長

  

1965( 昭和40)年初頭、加古川市内の障害児学級の担任をしていた久保田静子さんは、近隣の小・中学校の障害児学級担任の集まりの中で、教え子たちが卒業しても、働く場・居場所がないという現状に心を痛めた。そして、土地や建物の提供者を探し、仲間の教職員の協力のもと、やっと、手づくりの小さな作業所ができた。

1969(昭和44)年10月11日、わかば学園開設。久保田さんは教職を辞し、学園の代表となった。当時、小規模作業所とか無認可作業所という名前も概念もない中での船出だった。

作業所では、年賀状や名刺の印刷、鶴林寺での売店で文具や駄菓子の販売をし、利用者にエ賃が渡すことができるようになった。もちろん、公費補助金など望むべくもなく、一切の運営費は、保護者や、ボランティアの協力を得ながら、バザーや内職の仕事、リヤカーを引いての野菜販売など血の滲むような努力を重ねながら100%自主財源で凌いできた。唯一の職員である久保田さんの人件費は、1円もなく、毎日毎日が精一杯の状態だった。

借りていた土地が使用できなくなり、1979(昭和54)年1月、現在地に移転。久保田さんの私財を投入し、私有地に建設。農園作業も加わり、寄付された用品の販売をするなど、活動を増やして利用者のエ賃を確実なものにしていった。

1979(昭和54)年7月、「福祉の店わかば」をオープン。

2003(平成15)年4月、菓子工房を設立、クッキーの製造で、女性の作業場が確立。販売箇所も徐々に増えていく。

同じ年、2003年5月、加古川市寺家町に「ふれ愛ランド」をオープンさせる。商店街の空き店舗を利用しての開設だった。食事ができ、クッキーの販売や寄付用品の販売、学園でとれた野菜の販売へと活動を広げていった。利用者も接待をする等、活動が増え、エ賃も増加していく。次々と保護者の支援、ボランティアの協力を得ながら、「利用者のために、利用者のために」と邁進。

2008(平成20)年BDF(   バイオディーゼル燃料)事業開始。男性の働く場所として始めたが、2022年に閉鎖。

2008年10月、NPO   法人わかば福祉会設立。

やっと、公的援助が得られるようになった。就労継続支援B 型    法人としての新しい歩みが始まった。そして、利用者も高齢化。また、社会情勢の変化、家庭の状況から、「利用者が生活して、わかば学園へ通ってくることができるように」とグループホームを建設。

2009(平成21)年2月。「本館」完成(女性棟)。次いで、2016(平成28)年4月、「森の家」(男性棟)完成。新しい形の運営を、展開していった。

2019(平成31)年4月公民館に喫茶「わかば」をオープン。地域の方々の憩いの場になっている。利用者もまた、地域の人たちに守られ、活動している。

2019(令和元)年創立50周年を迎える。そして、久保田さんは2025(令和7)年1月に100歳を迎えられた。今なお、元気で、事業所に出て、利用者たちを見守っておられる。

今や、「わかば学園」は兵庫におけるシンボル的存在となっている。久保田さん中心に、保護者の方々、ボランティアの皆様方、地域の方々の応援に支えられ、56年が経過した。

加古川市、兵庫県、いや、全国でも先駆けて、障がい者たちの働く場所を提供。そこでの運営や様々な活動の展開は、他の事業所の模範となり、後日、開所されていった施設の先駆的役割を果たしてくださっていると思う。

 

  

以上のことから、久保田 静子氏を第26回ヤマト福祉財団小倉昌男賞に推薦致します。

式典中に再生された特定非営利活動法人わかば福祉会の紹介ビデオです。

小淵 久徳さん 

  • 社会福祉法人ゆずりは会 理事 菜の花 管理者

略歴

1974年 群馬県前橋市生まれ

1997年 東北学院大学経済学部経済学科卒業

    株式会社群馬ロイヤルホテル入社(〜1998年退職)

1998年 粕川村農業協同組合入職 金融および共済業務に従事

2009年 前橋市農業協同組合へ統廃合

2010年 前橋市農業協同組合退職

    群馬県高崎産業技術専門校インテリア木工課入学(〜2011年卒業)

2011年 社会福祉法人ゆずりは会入職

2016年 社会福祉法人ゆずりは会 菜の花 管理者

2017年 社会福祉法人ゆずりは会 理事

 

<主な資格>

ファイナンシャルプランニング技能士2級、宅地建物取引士社会福祉士、大型特殊免許(農耕車限定)

農福連携技術支援者(農林水産省認定)

 

<実績業績>

一般社団法人農福連携自然栽培パー ティ関東ブロックリーダー農福連携特例子会社連絡会オブザーバー

ノウフク・アワード2022 グランプリ受賞

大隅半島ノウフクコンソーシアム アドバイザーノウフクコンソーシアム東日本 副会長

  

  

推薦者 吉田 行郷さん

千葉大学園芸学部食料資源経済学科   教授

現在農業と福祉が連携し、障害者の農業分野での活躍を通じて、障害者の自信や生きがいを創出し、社会参画を実現する取り組みである農福連携の推進に国を挙げて取り組まれています。こうした中で、小淵久徳氏が管理者を務めている社会福祉法人ゆずりは会 菜の花は、国が表彰するノウフク・アワード2022でグランプリを受賞するなど農福連携分野ではトップランナーの一つとなっています。

菜の花は、2014年に設立されて以来、農業及び関連事業を中心に取り組んでいますが、小淵氏のたゆまない努力によって、地域農業の担い手としても周囲の農家から認められ、彼らが離農する度に農地を預かってきた結果として、生産規模はおよそ16ha( 畑10ha、水田6ha)に達しており、米麦、タマネギ、エダマメ、ブロッコリー等の生産を巧みに組み合わせて、利用者が効率的に生産を行える体制を構築することで、農産物等売上も3,900万円を実現しています。

農作業における人材の配置と活用については、小淵氏による独自の工夫が行われており、農作業を細かく分解し、利用者それぞれの障害特性を踏まえた作業分担を行うことで、彼らが取り組める作業の範囲と量を増やすことに成功しており、農産物の売上高とそこから支払われる障害者25人の工賃・ 賃金の向上を実現しています。就労継続支援B 型事業所であるにも関わらず、2024(令和6)年度のゆずりは会  菜の花の平均工賃は、98,754円/月に達しています。これは就労継続支援B型の全国平均が25,053円(2023(令和5)年)から比べてもはるかに高く、全国でもトップクラスの水準となっています。

さらに小淵氏は、こうしたこれまでに蓄積してきた「農福連携」に関する知見を活かして、農福連携の全国組織、広域組織でも指導的な立場にあり、貴ヤマト福祉財団「農福連携実践塾」の塾長も務めており、全国の農福連携を目指す事業所の指導においても、惜しみなくその技術を伝え、後進の指導に当たっています。他にも見学の受け入れ、講演依頼などを通じて、機会ある度に全国各地で「農福連携」に取り組む実践者の農業技術や組織運営力の向上にも務めており、国が推進している「農福連携」に大きく貢献しています。

今後も小淵氏は新しい時代の福祉のモデルとなる取り組みを担う存在として、一層の活躍が期待できることから、小倉昌男賞にふさわしい人材でありますのでここに推薦いたします

  

以上のことから、小淵 久徳氏を第25回ヤマト福祉財団小倉昌男賞に推薦致します。

式典中に再生された社会福祉法人ゆずりは会 菜の花の紹介ビデオです。