2019年08月23日 (金)

大阪会場 マイドームおおさか

山内民興氏

講演「プライドのある自立」ぷろぼのが目指す人づくり

(社福)ぷろぼの 理事長
第18回ヤマト福祉財団小倉昌男賞受賞

山内民興氏

以前は、東京でIT企業を経営していたのですが、喉頭がんで声と職を一度に失いました。奈良県に移り住みリハビリ生活をはじめて痛感したのは「働くことは、人らしく日々を生きる大切な行いだ」ということです。そんな私に、これまで企業で培ったITや経営ノウハウを活かし、障がい者の就労支援を行ってくれないかとお声がかかり、15年前にこの世界に入りました。

会社や職種を自由に選びたいという気持ちは、障がい者も同じです。いまダイバーシティという概念が浸透し始めていますが、ぷろぼのでは、通所だけではなく在宅勤務、テレワークなど、一人ひとりに合った多様な働き方ができる体制を整えています。さらに、社会人スキルの修得と魅力的な働く場の提供の二つを同時に進めています。現在、ぷろぼののメイン事業となっているのは、ソフトバンクと提携したロボテックス事業です。感情認識ヒューマノイドロボットPepperくんを10体ほど使ったアバター就労で働き方の可能性を広げていくプロジェクトなのですが、このプログラムを利用者さんが開発しています。

私が全体のテーマとして掲げているのは「育ち合う福祉」です。一方的な関係ではなく、利用者さんも職員も関係機関の方も、みんなが互いの役割を果たし、互いを必要としながら一歩一歩成長していく。これにより利用者さんは、地域に必要とされる責任ある仕事に従事でき、より多くの給料を得ることもできます。それが「プライドのある自立」の実現につながると、私は信じています。

村上 和子氏

講演 「シンフォニーの取り組み」知的障がい者の自立のために

(社福)シンフォニー 理事長

村上 和子氏

大分県で喫茶・レストランなどを経営し、知的障がい者の自立に取り組んでいます。私がこだわり続けているのは、働く場、仕事の充実はもちろんですが、利用者さんが社会生活力を身に付けていくことです。

地域で働き生活していくためには、一人でバスに乗る、お金を使うことなどが必要です。毎日元気に通所している利用者さんが、お母さんの発熱で送迎してもらえず欠席しました。その方は、漢字が読めず計算もできません。でも一人で通えるようになりたいと切に願っています。その気持ちに応え、支援するのが私たちの務めです。行き先を書いた大きな紙を作り、最初に乗るバスの料金は右のポケット、次に乗り換えるバスの料金は左ポケットと分けて持つようにしました。最初は一緒に乗車し訓練をはじめましたが、やがて一人でもできるようになっていったのです。

現在は、行政、交通機関などの理解と協力を得て実際に社会の中でさまざまな経験を積める訓練もできるようになりました。利用者さんや職員を見つめる地域の方の目はあたたかく、いつも感謝しています。でもそれに甘えず、商品の品質やサービスを高め続けていくこと。そんな日々の努力があってこそ、安心して働ける、暮らせる生活環境を築くこともできます。A型でも移行支援でも大切なのは、利用者さんの夢を叶える事業所であり続けることです。

上野容子氏

講演「夢の実現に寄り添う」精神障がい者とソーシャルワーク

(社福)豊芯会 顧問 東京家政大学 名誉教授

上野容子氏

東京都内で精神科ソーシャルワーカーとして長年勤務していました。現在は、ボランティアの方や地域の方の協力を得ながら、精神障がい者の地域生活の支援と、働く支援を約半世紀近く続けています。

いま日本には、精神障がい者が約392万4000人いると報告されています。当事者にアンケートを取ると「収入がない、家族と一緒でなければ暮らせない、将来が見えない」などの声がたくさん集まりました。それは本人の能力よりも社会的な差別、偏見が大きく影響しています。中でも最も大きな障壁は、人々の無関心です。「ソーシャルインクルージョン」という言葉には、ともに行動するという意味もあります。私たちは、多くの方がオープンに参加できる場づくりを進めています。企業が当り前に障がい者を雇用できる環境や社会も、地域の方の理解と参加が原動力となり、はじめて実現できると私は考えています。

私が大切にしているのは、利用者さん一人ひとりに寄り添う姿勢です。精神障がいを抱える方は、それぞれなにか特技を持っています。それを生かせる仕事づくりと支援を目指し、経済的にも自立した生活を送れるように応援しています。全国の福祉施設のみなさんには、制度ありきで事業を考えるのではなく、目の前にいる利用者さんの「こういう仕事をしたい」を形にしていってほしいと願っています。制度とは、そのための一つの方法に過ぎないのですから。

仲井 真紀子さん

当事者の声 1

(社福)かがやき神戸 ぐりぃと 

仲井 真紀子さん

不安障害があり、目に見えない車椅子に乗っている私は、怖くてバスを利用できません。送迎のあるここなら安心して通え、私らしく働くことができています。いまの私の仕事はパフォーマーです。イベントなどでクラウン(道化師)を演じます。つい頭の中で嫌なことを想像してしまう私には、考えるより先に行動し身体で表現できるこの仕事は向いていますし、とても面白いです。

廣瀬美咲さん

当事者の声 2

(社福)亀岡福祉会 第三かめおか作業所

廣瀬美咲さん

私は、温泉旅館やコンビニなどで販売する洋菓子や和菓子づくりをお手伝いしています。人を笑わせることが楽しくて、以前は芸人になりたいと考えていました。でもいまは、仲間にいっぱい笑ってもらえるこの仕事場が大好きです。いまのお給料は、月2万5000円ですが、もっと仕事を覚えてたくさんお給料をもらえるようになり、貯金もしていきたいと思っています。

鈴木 直さん

当事者の声 3

(社福)亀岡福祉会 第三かめおか作業所

鈴木 直さん

私の仕事は、草刈りや清掃です。休憩時間には仲間とワイワイ話しながら、楽しく働けるこの仕事が気に入っています。いま月給は4万6000円で、春のボーナスは7万6000円をもらいました。でもいまの給料に納得はしていません。もっと頑張って稼いでいきたいです。趣味はTVゲームやパソコン。最近はジムにも通い、細マッチョを目指して身体を鍛えています。

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