2021年02月20日 (土)

東京・大阪・福岡 各会場共通

主催者あいさつ

(公財)ヤマト福祉財団 理事長

山内 雅喜

本年度のパワーアップフォーラムは、みなさんの健康を守るため、一時は中止も考えました。それでも「コロナ禍でもより多くの方が参加でき、高い意識で取り組みを続けられるように」とオンラインで実施することにしました。

未だ新型コロナウイルス感染拡大は、終息の目処が立っていません。視聴されているみなさんも、さまざまな苦労をされていると思います。そういった中でも、この機会に新しいことをはじめ「ピンチをチャンス」に変えている福祉施設もあります。そんな講演者のお話の中から、本日は、なにか一つでもこれからに役立てられる、参考となるものをつかんでほしいと願っています。

講演 クロネコヤマトの満足創造経営

(公財)ヤマト福祉財団 理事長

山内 雅喜

私は、障がい者福祉についてはまだ素人の域ではありますが、経営や組織の運営については多少の専門知識を持っています。本日は、みなさんが売上と給料増額を目指すために、少しでも参考となるお話ができればと思います。

ヤマトグループが、これまで行って来た戦略を振り返ると次の九つの経営ヒントが浮かび上がってきます。「1.自分たちの特長をわかりやすく伝える。2.自分たちのお客さまはだれなのかをはっきりさせる。3.自分たちの良い循環をもつ。4.自分たちの他との違いをはっきりさせる。5.自分たちのことを世の中に知ってもらう。6.自分たちの存在価値を言えるようにする。7.お客さまの声、社員(職員)の声を大切にする。8.全員経営は、やる気、喜びを生み出す。9.共通の価値観(なにを大切にするか)をみんなが持つ」。中には当たり前に思えるものもあるかもしれませんが、重要なのは、全員で共有し実践していくことです。

ヤマトグループでは、自分たちを選んでもらうための差別化をさまざまな角度から追求しきました。その際「送る人だけではなく、受け取る人」へとターゲットを変化させていくことで新たなサービスを生み出すことに成功しています。また「全員経営」という意識を浸透させることで、直接お客さまと接するドライバーも含め、だれもが自社の特長やサービスのあり方、コンプライアンスなどを自覚し、考え、行動できています。社訓の一つに「ヤマトは我なり」とありますが、お客さまは目の前の社員を見て私たちの会社を見ています。そこに誇りと責任を持って働くことが大切であり、会社も働く環境や権限などを改善し社員に提供してきました。こうした考え方や取り組みは、福祉に関わるみなさんにも同じことが言えるのではないでしょうか。

みなさんは、コロナ禍でさまざまな変化に直面し戸惑っていると思います。しかし、できなくなったことばかりではなく、できるようになったこともきっとあるはずです。お客さまと現場職員の声は、経営者にとってまさに宝の山。そこには新しいアイデアが隠されています。他の講演者のお話からも、これだと思えるものを一つでも見つけ出し、積極的に取り入れてみてください。そして、経営者としてこれからの時代に大切な「変わるべきもの、変わるべからざるもの」を見極め、利用者さんの自立と幸せを実現してほしいと思います。

時流講座 障がいのある人をめぐる関連動向とディーセントワーク

(NPO)日本障害者協議会代表/きょうされん専務理事

藤井克徳氏

いま世界中が、新型コロナウイルスの感染拡大という大波にもまれています。同じ新型コロナウイルスでも各国の対応はさまざまであり、いままで隠れていた人権問題などが浮き彫りとなってきました。これは政治や制度、人々の意識の違いであり、人権問題に対するバロメーターとしても見ることができます。日本でも、4年前の津久井やまゆり園の悲劇、その背景でもある優生保護法と被害者の訴訟、障がい分野をめぐる社会保障や就労などのいろいろな問題が、よりあらわになってきました。

コロナ禍で行った利用者工賃実態調査によると、約8割の事業所が売上などに大きな影響を受け、このままでは工賃を下げざるを得ないなどと答えています。障がい者の雇用については、日本人の1564歳の生産年齢人口の約78%が就労できているのに対し、障がいのある方は約33%しか働くことができていません。公的部門、民間企業の法定雇用率は共に改善方向にありますが、就労継続支援A型・B型事業所で働いている人を合わせてもまだ約821000人です。

ディーセントワークは、だれにも等しく与えられる権利ですが、日本は世界に遅れを取っています。それはなぜなのか、どう変わるべきか。福祉施設のリーダーには、気づく力・伝える力が必要です。どのような状況にあっても福祉施設は「利用者さん、職員、事業所」の三つを守らなければなりません。そこで忘れてはならないのが「つねに中心に利用者さんを置く」ということです。これらを胸に、コロナ禍でも負けずに進んでほしいと願っています。

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