2018年08月24日 (金)

マイドームおおさか

武田 元氏

講演 障がいのある人が最高品質を極めるために

講師:(社福)はらから福祉会 理事長

武田 元氏

はらから福祉会では、宮城県の食材を活かし、本日の大試食会にも出品しました豆腐や牛タンなどを作っています。36年間求めてきたことは、どんなに障がいが重かったとしても、暮らせるだけの賃金を保証する、これ一つです。それにはお客様が求める品質、また食べたいと思う、知り合いに差し上げたいと思う商品をいかに作るか。求められるだけの量産をどう実現するかです。

品質という点では、ある程度評価いただく点まで到達できています。今年の3月にはテレビで豆腐マイスターの方に、はらから豆腐を取り上げていただきました。また、充填豆腐は、全国豆腐品評会で金賞を受賞しました。牛たんも宮城県柴田町のふるさと納税の返礼品として採用されています。

この品質と量産化を同時に実現するため、技術の高い人、まだ修得できていない人が一緒に働き、互いを支え合う働く集団としてのチーム化を考えました。さらに機械化も図り、障がいの重さ、障がいからくる困難さを解決しようと努めています。確かに障がいが重いと難しい仕事もありますが、不可能ではありません。求められるのは、私たち職員の努力、知恵、結束力です。

はらから福祉会には約300名の利用者さんがいます。さらに売上を伸ばし、すべての利用者さんにより高い給料を支給し続けていくにはどうすれば良いのか。いまも試行錯誤を続ける私たちに、完全なゴールはありません。

楠元 洋子氏

講演 お弁当・高齢者向け配食サービスに夢を託して

講師:(社福)キャンバスの会 理事長

楠元 洋子氏

私は、夢へのかけ橋実践塾で弁当・配食サービスの塾長を務め、塾生と一緒に1日1個でも多く、そして月100円でも1000円でもたくさん利用者に給料を支払うためにメニューづくり、大量調理、業務管理などの研修を行っています。

当施設がある宮崎県都城市には、野菜、果物、海の物などいろいろな食材があります。それを活かしたお弁当は好評を得て、1日約2,000食にまで伸びました。生産は、機械も導入して対応できますが、配達は1人で100食運ぶのも大変です。次第にみんな疲れ果て、一般の弁当配達は辞めることに。そんな時、高齢者向け弁当の話が来ました。私たち福祉施設は、刻み食、とろみ食など、障がいのある方が食べやすい料理を作るノウハウを持っています。一つの場所にまとめて届けるのなら配達も楽です。そこで一般家庭への高齢者食の配達は200食くらいにし、施設や病院などにまとめて配達するように切り換えました。

コンビニの進出で、どこの地域も弁当業界は厳しい競争下にあります。しかし高齢者向け配食サービスなら、福祉施設の強みを活かせます。当施設では、配達する弁当箱に一人ひとりの名前、好み、アレルギーなどを記入し、個々の要望にお応えしています。地域の市場、食材、資源をしっかりと把握し活かすこと。私たちが売りたいものではなく、お客様が欲しいものとはなにか。そして、利用者さんが働く力をどう支援できるか。ぜひみなさんも考えてください。

亀井 勝氏

講演 食品提供で大切にしたいこと

講師:(社福)ひびき福祉会 理事長

亀井 勝氏

大阪で菓子製造・販売などを行っています。大試食会に当施設の商品を出品しましたが、うちのマドレーヌは日本一おいしいと自負しています。大事なのは、自信を持てるだけの努力、工夫をすること。かつて福祉施設を支えた下請け仕事は海外へ流れています。これからは、自分たちで商品を考え、作り、売らなければ、利用者さんの給料を上げることはできないのです。

そのためには、まず売れる商品を一緒に開発しレシピを作ってもらうパティシエを雇ってください。次に数字としての目標をきちんと立てましょう。20人利用者さんがいたら、月5万円ずつ払うには1ヵ月いくら売上が必要かが見えてきます。さらに材料費などコストを全部割り出し、いくらの価格で何個売るべきかを計算します。うちは、OEMも受けていますが、価格はお客様の言いなりではなく、きちんと利益の出る価格を自分たちで決めさせてもらっています。

次に必要なのは、利用者さんがレシピを見て自分で作業ができるように訓練することです。この人にはここまでやってもらうと決め、できるまで指導します。一度できれば自信も付き、一人でもできるようになります。菓子作りは、利用者さんの仕事です。職員がやるべきことは、商品開発、衛生環境の確保、営業開拓などです。目標達成のためになにが必要か、PDCAをかけながらスパイラルで上がっていく努力と工夫を、全員で続けてください。

大試食会に出展した11事業所と商品一覧

大阪会場では、昨年に引き続き大試食会を開催し、大盛況となりました。3人の講師の施設も自慢の商品を出品。多くの来場者は、商品に舌鼓を打ちながら、食材選びや調理方法などに関心を抱き、さまざまな質問を投げかけていました。

法人名、事業所名 出展商品
(社福)聖徳園、
ワークメイト聖徳園
酒粕ロールケーキ、
フルーツピクルスドリンク
(社福)慶光会、
ワークスひるぜん
まさか飯
(社福)一麦会、けいじん舎 熊野牛と北海道男爵いものコロッケ、
イノブタコロッケ
(社福)ひびき福祉会、
ハイワークひびき
クッキー、マドレーヌ、フィナンシェ
(社福)ひびき福祉会、
リーブセンターひびき
餃子、春巻き、焼売

(社福)キャンバスの会、
給食センターキャンバス

鳥飯、冷製スープ(人参、ごぼう)
(社福)はらから福祉会、
蔵王すずしろ
はらから袋豆腐800グラム、蔵王の絹
(社福)はらから福祉会、
えいむ亘理
牛タンスライス、
子牛の牛タンスライス
(NPO)Creer、Creer 阿波半田そうめん(鳴門わかめ、すだち添え)、
オリジナル塩から揚げ、焼き菓子
(NPO)吉野コスモス会、
うぃる工房
柿の葉寿司、炙りさんま寿司、鱧の焼き霜握り
(NPO)はまゆう作業所、
はまゆう作業所
めはり寿司、切り干し大根煮、サラダ
辻 元美さん

当事者の声 1

(NPO)はまゆう作業所

辻 元美さん

私は、今年で50歳、夫と二人の子どもがいます。生まれつき右手、右足に軽いまひがあり、右手での長時間作業などは苦手ですが、和気あいあいと働けています。ここは、人気の切り干し大根をはじめ、1年中大忙し。8年以上も農産加工を担当していますのでどんな作業も行うことができます。夫婦で買った家のローン完済までもう少しですが、そのあともずっと働き続けていきたいですね。

森出 剛彦さん

当事者の声 2

(社福)ひびき福祉会 ハイワークひびき 

森出 剛彦さん

ここで働いて18年、最初の頃は洗い物や道具を片付けるような簡単な仕事しかできませんでした。それでも少しずつお菓子の名前と材料を覚え、いまはお菓子づくりを担当しています。いろいろ失敗もしましたし、まだ完璧ではありません。それでもこの仕事が好きですし、後輩に教えてあげることができるくらいまで、上手になりたいと思っています。

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