2018年07月27日 (金)

全社協・灘尾ホール

山内民興氏

講演 「プライドのある自立」ぷろぼのが目指す人づくり

講師:(社福)ぷろぼの 理事長

山内民興氏

私は、東京でIT企業を経営していましたが、喉頭ガンで発声機能を失い、故郷の奈良に戻りました。このとき、働くことができない辛さを理解しました。そんな私に、IT企業の経営者としての経験を活かし、障がい者福祉に力を貸してほしいと声がかかったのです。働くことは、人間らしく生きるための大切な行い。ITやIOTを働く道具として使うことで、障がいが重い方にも働く機会を創出できると考え、依頼をお受けしました。

福祉の現場に入ってわかったのは、障がい者が生き甲斐を感じて働き、社会的自立を果たせるだけの育てる、受け入れる環境が整っていないことでした。そこで平成18年に(社福)ぷろぼのを設立し、“育てる福祉”を目指しました。利用者さんの仕事をする力が高まれば質の高い仕事を受注でき、障がいがある人も一般企業のプログラマーと肩を並べて働くことができます。これにより自信が生まれ、プライドのある自立にもつながっていきます。

現在は、仕事の技能から社会人としてのスキルまで個別に高めていく4ステップの訓練プログラムで就労支援を行い、その訓練成果をデータベースにして職業能力評価や個別支援計画書の作成を体系化しています。さらに多様な事業体がつながり共同事業を行う「あたつく組合」をつくり、障がいのある人の働く場の提供や支援、企業や他の福祉施設などとも連携し、地域の課題解決に取り組んでいます。

藤井克徳氏

講演 「働くこと・暮らすこと」を支える力を高めるために

講師:(社福)武蔵野千川福祉会 常務理事

新堂 薫氏

東京都武蔵野市でDMの封入封かん事業を柱に六つの事業所を運営し「機能分化をした働く場づくり」を行っています。六つの事業所は、利用者さんの働く力に応じて、担当する仕事の内容が段階的に変化します。利用者さんは、働きながら仕事や社会人としてのスキルを高めることで、次の事業所へとステップアップし、それとともに給料も上がっていくという仕組みです。

給料が上がると利用者さんの働く姿勢は変化します。1万円のときは、簡単に仕事を休んでいた人が、3万円で欠勤が減り、5万円で仕事に対する責任感も生まれてきます。8万円になると、自分の仕事が終わると周りのサポートに動くなど、自ら考え行動するように変わってきます。給料が上がることで、努力すれば夢がかなうことを知り、次の目標も話してくれるようになるのです。

私は、夢へのかけ橋実践塾の塾長も務めています。塾生には、5Sの徹底などで利用者さんが働きやすい、視覚的にもわかりやすい職場を実現すること。利用者さんの興味・関心に着目し、できることを引き出し伸ばす支援で能力を高めるようにと話しています。私自身も生産性を上げ給料増額を目指せる事業所づくりをつねに心がけています。平成29年度は、当施設で最も高い給料を支払えた事業所の平均月額給料は98,629円でした。現在は11万円を目標に、より営業努力し、利用者さんの社会的自立を応援したいと考えています。

堀込 真理子氏

講演 「本人と家族の思いにこたえて」重度障がい者のITサポート

講師:(社福)東京コロニー 職能開発室事業所長/東京都障害者ITサポートセンター センター長

堀込 真理子氏

いま日本には、病気の治療を行いながら働く方が約2000万人いると言われています。さらに障がいが重い方も含め、すべての人が均等に働ける機会を設ける働き方改革を実現するにはなにが必要か。私は「事業所や会社に通わなくても、在宅勤務ができるテレワーク」を、ITやIOTで支援しています。

それには、ネット環境などのインフラの整備だけではなく、障がいが重く市販のマウスやキーボードでは作業が難しい方などにも使いやすいツールの開発、自分の働きたい仕事に就くための技術を習得する場、さらに就労してからのサポートも必要です。技術は加速度的に進歩しています。今後IOTがより進めば、重度障がい者がテレワークできる機会はより増えていきます。それに伴い利用者が直接操作する端末やアームなどの機器を、その人に合わせてカスタマイズできる体制を築くことも大切です。

テレワークは、障がいのある方にとって良い追い風となっています。しかし、それに頼り過ぎて大切なことを見失わないようにしなければなりません。私たちは、支援制度も含め、働きたいと願う人の気持ちに応えて、だれもがバランスよく活用できるようにすることを今後の課題としています。労働も、福祉も、医療も人それぞれのニーズに応じてチョイスできること。それが真のディーセントワークにつながると信じています。

さくらさん

当事者の声 1

(社福)はる パイ焼き茶房 尾留川(びるかわ)

さくらさん

パイ焼き茶房は、統合失調症で悩み苦しんでいた私を救ってくれました。ここで得たのは、相手の気持ちを考えお話をすれば、自分も理解してもらえること。そして周りに必要とされている喜びです。私の夢は、障がい者雇用で接客の仕事に就くことですが、一つの夢に固執せずいろいろなことに挑戦していきます。いますべての経験が、私の人生の素敵な贈り物となっています。

当事者の声 2

フリーランス 

鹿久保 芹菜さん

脊髄性筋萎縮症ですが、指1本で操作できるマウスを使い、パソコンで在宅就労しています。働くことを望んだのは、家族の役に立ちたいと強く願ったから。いろいろと苦労しましたが、国家資格も取得できました。私は、できないことがあってもあきらめず、どうすればできるようになるかを考えるようにしています。これからも、自分の可能性を信じ挑戦を続けます。

長谷川 晴基さん

当事者の声 3

(株)TBSテレビ 

長谷川 晴基さん

TBSテレビの契約社員として、モニターである障がい者や支援者の声を制作側に届ける仕事をしています。私は、脊髄性筋萎縮症という重い障がいを抱えていますが、それ以外は43歳のどこにでもいる人間です。しかし「仕事をする」「一人で暮らす」という至極あたりまえのことも困難でした。それをいま実現できていることを、夢のようにうれしく感じています。

他の会場の抄録を見る