2018年08月03日 (金)

ACU-A・アスティ45

岩田克彦氏

講演 雇用と福祉にまたがる特性を活かし、新たな時代を切り開くA型事業所を目指して

講師:「中間的就労分野におけるA型事業の可能性検討事業」研究会座長、全Aネット顧問

岩田克彦氏

私は、以前、厚労省で働いていたこともあり、いまは障がい者就労問題をバックアップしています。できるだけ多くの人が働くことができる法律をつくっていこう。障がい者関係の施策をうまく利用し、技術などを学べるダイバーシティ就労支援校などのサポートシステムをつくっていこうとしています。

私は、就労継続支援A型事業所(以下、A型事業所)の可能性を検討する研究会の座長も務めています。昨年、ヤマト福祉財団からご依頼を受け、A型事業所を取り巻く問題点を調査・報告しました。A型事業所は、最低賃金を支払い、社会保険料も負担しなければなりません。そのため、経営改善指導が必要な事業所も多数存在します。質の高い働き方を実現するにはどうするのか。精神障がい者の雇用、より就労が困難な障がいの重い方の就労支援。一般企業の参入もはじまりますし、障がい福祉サービスの報酬や調整金の問題もあります。

現在、福祉から就労への政策理念が強調されています。障がい者の一般労働市場での就労実現には、福祉的側面の支援が必要であり、A型事業所の果たす役割はとても大きくなります。しかし、すべてのA型事業所が経営を存続しながら、それを同時に行うのは容易ではありません。私たちの今後の課題は、それを可能とする仕組みづくりです。これは日本に限らず世界的に必要な仕組みであり、就労に悩む当事者のためにもなんとしても実現しなければなりません。

係長 服部 剛氏

行政説明

厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 障害福祉課 就労支援係

係長 服部 剛氏

私は、平成28年度から厚生労働省障害福祉課で就労支援を担当しています。初年度は、A型事業所の基準の見直し、次年度は報酬改定に携わりました。今年度は、できるだけ地域に出て、さまざまな課題をもらい、次の制度改正に生かしていこうとしています。

私は、障がいのある方が生まれ育った地域で自立した生活を送るためにも、一般就労の機会を増やすこと、A型事業所での仕事と給与をより高めることが大切だと考えています。また一方で、2025年には団塊の世代が75歳以上になり、高齢者一人を1.2人で支える時代がやってきます。この1.2人の中に、障がい者も含まれるように、きちんと働ける支援がより必要なのです。

現在、法定雇用率を達成している企業割合は約5割しかありません。そんな中、平成28年度にA型事業所から就労移行できた方は約2,700人いました。こうしたA型事業所の頑張り、置かれた現状などを正しく評価して報酬改定も進めました。それでもなおいろいろな改善が必要ですし、支援を続けていくことを、私はいろいろな地域で説明しています。いま世の中には「A型事業所は高収益を上げられます」「自立支援の給付金や特開金、報奨金が入るので、いまがチャンスです」と話す悪しきコンサルもいます。みなさんには、そんな言葉に惑わされず、いまの正しいやり方を貫いてほしいと願っています。

石澤利巳氏

事例報告/札幌市障がい者協働事業から学ぶ 報告1 

(NPO)札幌障害者活動支援センターライフ 専務理事

石澤利巳氏

「札幌市に合った障がい者の働く支援モデルをつくろう」と、2006年に札幌市と交渉し「障がい者協働事業」を立ち上げました。これに参加できるのは「札幌市内に居住し、通常の一般の企業に就労することが困難な障がい者が5割以上、かつ5人以上いること」。他には「社会保険適用となる労働時間、健康保険や厚生年金保険、雇用保険の適用など」が原則となっています。

札幌市は、補助金以外にも事業を成功させるために、各事業所の商品を販売する「元気ショップ」、働く場を広げる「元気カフェ」、企業からアウトソーシングを集める「元気ジョブ」の三つの元気で応援してくれています。私は、元気カフェや印刷事業で、家賃補填を付けて約4万円の月給を支払っています。まだ課題はありますが「障がいのある者もない者も対等な立場で共に働ける、新しい職場形態を構築する。地域社会に根ざした就労を促進し、障がいのある者の社会的、経済的な自立を図る」という目的達成に向けて頑張り続けます。

角谷 宏氏

事例報告/札幌市障がい者協働事業から学ぶ 報告2

(NPO)地域生活支援グループ・共働友楽舎ワークショップアリス 所長

角谷 宏氏

1998年に札幌市北区で小規模作業所・ワークショップアリスを開設。現在は、法人化し、二つの地域活動支援センターを立ち上げて活動しています。事業は、タオルの名入れ印刷、Tシャツのプリント、DMの封入作業やポスティングです。2011年からは、障がい者協働事業にも参加しています。

障がい者協働事業とともに進めているのが、就労移行支援です。そこでデザイン制作をメインに据えて、まず営業マン、それからデザイナーを雇用するような形で仕事を始めています。ただし、これだけだと専門的になり過ぎてしまうので、より多くの方に仕事を創出できるように、印刷以外の仕事にも間口を広げて営業活動しています。利用者さんが自分の将来に期待ができる、そんな仕事を増やし、一般就労に結びつけられるようにしていきたいと思います。

荒野耕司氏

事例報告/札幌市障がい者協働事業から学ぶ 報告3

(NPO)地域生活きたの センターぱお 代表

荒野耕司氏

私の子どもも自閉症で、彼らの働く道筋をつくりたいとジョブコーチの資格を取得し、16年前に福祉の世界に入りました。「アメリカでは、公共の場で障がい者の働くカフェがある」と聞き、区の使われていなかった喫茶コーナーを借りてスタート。現在は、市がつくった社会福祉総合センター内のカフェを、障がい者協働事業の元気カフェ「ふらっと」として、私たちが運営しています。

最初は、なかなか認知度も売上も上がりませんでした。これではダメだと思い切って半額キャンペーンを企画。メニューも工夫し増やしていきました。目標の売上を達成した日は、表に色を付けていますが、その色がだんだん増えていくのを見てみんなのやる気とともに売上も伸びています。いまはセンターの工事のため休止中ですが、再オープンの際はぜひみなさんでご来店ください。

大井敏彦さん

当事者の声 1

(NPO)札幌障害者活動支援センターライフ リサイクルプラザ発寒工房

大井敏彦さん

51歳のときアスペルガー症候群の診断を受け、いままで人間関係が上手くいかなかった理由がやっとわかりました。いまは作業所に通いリサイクルする家具の保管庫内の整理、作業場への移動などを担当しています。ここは障がいの有無に関係なく、共に働き、生きていける場所。周りの助けを借りながら、自分にできることをしっかりやりたいと思います。

岡崎詩織さん

当事者の声 2

(社福)さっぽろひかり福祉会 ひかり工房

岡崎詩織さん

医師にアスペルガー症候群といわれています。以前の職場では、怒られてばかりで自信を失っていました。でもパン作りを行うひかり工房では「筋がいい、体力があるね」と誉めてもらえます。ここには自分と同じような人もいて、互いの悩み苦労を理解し合うことができ、周りの対応も暖か。いまは、一人暮らしを目標に、後輩の指導も頑張っています。

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