リレーコラム。夢をつないで、第16回。COLUMN
導入部障害者就労、ダイバーシティ就労と、わが息子。
ダイバーシティ就労支援機構、代表理事、岩田 克彦。
主部
平成元年9月28日に生まれた長男の錬志郎は、きんジストロフィーという、筋肉細胞が徐々に壊れていく難病を患っていました。もう少しで遺伝子治療を受けられるのでは、と期待していましたが、昨年7月29日、30歳の誕生日があと2ヵ月というところで旅立ってしまいました。プールが好きな子で、プール通いが私の楽しみでした。まわりの皆が笑顔となる明るい子でした。葬儀には、延べ300人を超えるかたがたにご参列いただきました。ほとんど錬志郎をよく知っている人たちで、錬志郎は、何と多くのかたがたに、可愛がっていただいたのだなと改めて感謝しています。
さて、私が代表理事をつとめる、一般社団法人ダイバーシティ就労支援機構は、日本財団から、日本財団 Work Diversity 、ダイバーシティ就労プロジェクトを受託しています。ひきこもり、貧困母子世帯、刑余者、生活困窮な高齢者などなど、何らかの事情で働きづらさを抱える人々が日本にもたくさんいます。
こうした人々が就労することで、本人やまわりの人々の幸福度が高まる。多くの働きづらさを抱える人々を就労につなげる本格的政策を打ち出すことは、これからの日本社会をよくしていくことになる。こうした思いで、一昨年、11月に、この日本財団プロジェクトがスタートしました。複数の委員会、部会での検討、各分野の専門家からのヒアリングを実施中で、新たな就労支援策の効果を実証するためのモデル事業を近く開始予定です。
諸外国の障害者は、社会的障害者等も含むように変わってきています。日本も、従来の狭い障害者概念を広げる時期になってきているのではないでしょうか。本プロジェクトが、日本の障害者就労施策の進展にもつながるものになればと思っています。
長男の錬志郎は、私と障害者就労との縁をつくってくれました。ダイバーシティ就労はその延長線上にあります。今後とも、錬志郎がどこかで見守ってくれていると信じ、障害者就労、そしてダイバーシティ就労の推進に頑張りたいと思っています。
写真説明
錬志郎さん直筆の色紙とともに。
補足情報プロフィール
1977年、労働省入省。労働省統計調査第一課長、職業能力開発総合大学校教授などを経て、現在、一般社団法人、ダイバーシティ就労支援機構、代表理事、 NPO 就労継続支援 A 型事業所全国協議会、全 A ネット顧問。専門は、障害者の雇用、就業問題、職業教育訓練政策。著書に、障害者の福祉的就労の現状と課題、松井亮輔法政大学名誉教授と共編著など。